PacificoはLuis Alberto Spinettaが82年にリリースした名盤『Kamikaze』をはじめ、97年の『Estrelicia - MTV Unplugged』での楽曲提供(共作を含む)や共演で知られる一方、Spinetta関連の数々のアルバムでの印象深いジャケットや写真、Videoも手掛けた写真家/Video DirectorのEduardo Martíが在籍していたバンドである。Eduardo Martíはまた、Spinettaの息子Dante Spinettaと人気Duo Illya Kuryaki and the Valderramasを結成していたEmmanuel Horvilleur、元A-Tirador LaserのLucas MartíというArgentinaで活躍してきた2人のMusicianの父親でもある。Dylan、またはTurcoという愛称で呼ばれることも多いEduardo Martíは70年代初頭に、Hugo Arbe、Miguel Ángel PezzolanoとPacificoという名のTrioを結成してアルバムを1枚を残している。Argentinaからは当時、Almendraという不世出の存在に影響を受けて才能と個性に満ち溢れた数多くのバンドが登場し、南米らしい抒情的で歌心に満ち、高い演奏技術と考え抜かれたEnsembleを誇る素晴らしい作品が次から次に登場してくるような状況であった。そんな中にあってPacificoはAcoustic GuitarやFlute、PianoなどAcoustic楽器を主体として3人の瑞々しく素朴なVocal/Chorusで南米らしい甘美で歌心あふれる世界を生みだした。彼らのほっこりした優美な楽曲と演奏は心に安らぎを与えてくれる。確かに同時期のArgentinaらしい高度な演奏技術をベースに独創性に富み革新的でAggressiveかつProgressiveなEnsembleと楽曲で魅了するGroupに比較すると派手さはないし地味に感じてしまう方もいらっしゃるかもしれない。しかし、彼らが唯一残したこのアルバムは、素晴らしいジャケットのごとく優美で端整な魅力を放ち、永遠の輝きを放つ。これもまた南米らしい甘美で歌心とLyricismに満ちた名作のひとつであろう。なにより素朴で清涼感に満ちたところが彼ららしさ。
『La Bella Epoca』はPacificoが72年にリリースしたアルバム。基本Trioの歌と演奏にAquelarreのベーシストEmilio Del Guercio、ドラムスのRodolfo Garcia(この2人は元Almendra)、ギターのHéctor Starcの3人が参加しているのが興味深い。ピアノのPedro Bittiもイイ味を出している。
アルバム1曲は牧歌的なAcoustic GuitarのArpeggioから始まる“Cancion Para Un Pequeño Ladron”。GentleなVocalと仄々したChorusに素朴なFlute、Pedro Bittiが弾くPianoもイイ感じ。ギター・ソロも味わい深い。
やはり流麗なArpeggioから始まり典雅なMelodyを歌い上げるLyricalなVocalが心地良いHugoとMiguel共作となる“No Eras Vos, No Era Yo”。Acoustic Guitarの爪弾きと素朴なVocalと軽やかに浮遊するFluteがなんとも心地良い。
“Ella Es Tu Hermana”は夢見心地のイントロから惹きこまれる典雅なWaltz。穏やかに始まり、Aquelarreのリズム隊により静と動のContrastが鮮やかな高揚感と躍動感に満ちた歌と演奏が展開されるのが素晴らしい。
Eduardoと共作するMiguelがVocalをとる“Mi Magico Amigo”は牧歌的で仄々としたFolk Rock。MiguelのFluteが良い。
HugoとMiguel共作の“Una Estela Sin Final”はJazzyなギターや幻想的なChorusに心地良く響くPercussionが極上の味わい。Romanticな雰囲気も漂い、Acousticな演奏が桃源郷へと誘う。
“Llanto De Un Atardecer”はLitto Nebbia的な香りも漂う神秘的で美しいMelodyを持った抒情的なナンバー。ChorusとBottiのピアノが雰囲気を出している。
アルバム最後をシメるのは“Escapatoria”。これまた夢見心地で始まりEmilioとRodolfoが加わったバンドの演奏は力強く、メリハリのきいたProgressiveなRockに仕上がっている。
(Hit-C Fiore)