Terje RypdalといえばECM、やっぱり自分にとってはそういうイメージが強い。ECMを代表する3大ギタリストというのがあって、Ralph Towner、John Abercrombie、そしてTerje Rypdalなのだそうである。NorwayのOslo出身の屈指のGuitarist/Composer、Sound DesignerであるRypdalの音楽は北欧の早朝の薄闇の中に描き出される荘厳で冷ややかな世界が思い浮かぶ。または、静かに、しかし神秘を湛えて荒れ狂った嵐の過ぎ去った波の音だけが聞こえてくる深夜の海。そういった映像を喚起させる音世界が実にECMっぽいのである。幼少時にPianoとTrumpetを学び、10代で独学でギターを弾くようになったというRypdalは、The ShadowsのHank Marvinに影響を受けて60年代にThe VanguardsというRock Bandでキャリアをスタートさせている。その後、JazzのFieldへと方向性を変え、同じNorway出身のSax奏者Jan Garbarekと行動を共にするようになり、60年代に北欧に移住したGeorge RussellのRecordingにGarbarekやJon Christensenと共に参加する。69年にはLester Bowieのバンドの一員としてドイツのBaden-Badenで行われたJazz Festivalに参加したことにより国際的な注目を集めるようになる。68年に最初のLeader Album『Bleak House』をリリースした後、71年にJan GarbarekとBobo Stenson、Arild Andersen、Jon Christensenらと『Terje Rypdal』をリリースしたのがECMでの第一作となった。ECMのRypdalといえば、75年にリリースされた『Odyssey』が素晴らしい出来栄えであるが、前作に当たる本作も中々のモノだ。A面はJon ChristensenにベースはSveinung Hovensjø、鍵盤のPete Knutsen、そしてFrench HornのOdd Ullebergと組んだQuintetでの作品。B面はRypdalとMembers Of Südfunk Symphony Orchestraとの共演である。ジャケットを手掛けたのが日本人写真家の内藤忠行というのもポイントが高い。
『Whenever I Seem To Be Far Away』はTerje Rypdalが74年にECMからリリースしたアルバム。
アルバム1曲目は“Silver Bird Is Heading For The Sun”。Pete Knutsenが弾く幻想的なMellotronをバックにOdd UllebergのFrench Hornが虚空に鳴り響いていく。そこにTerje Rypdalの歪んだギターが切り込んでくる。Jon ChristensenとSveinung Hovensjøのリズム隊はスリリングに躍動する。KnutsenがヒンヤリしたElectric Pianoを弾くと、Rypdalのギターは、これでもかとばかりにEmotionalに弾き倒してくる。激しく煽りあうAggressiveなJazz Rockの様相がしばし続き、落ち着いてくると再びUllebergのFrench Hornが登場。しかし、依然Hovensjøのベースは低音で唸りを上げている。ChristensenはPercussiveにリズムを鳴り響かせ、Mellotronが冷気を送り込む。RypdalのギターがHeavyに迫ると壮大なEndingを迎える。
“The Hunt”はJon ChristensenのPercussiveな叩きぶりにOdd UllebergのFrench Hornが格調高く鳴り響く。ここでMellotronが登場。ジャケットのような寒々とした雰囲気に包まれる中、Terje Rypdalがギターで切り込んでくる。French Hornはあくまでも典雅に鳴り響くがギターとMellotronは邪悪な空気を運びこむ。
最後を飾るのはB面すべてを使ったタイトル曲“Whenever I Seem To Be Far Away (Image For Electric Guitar, Strings, Oboe And Clarinet)”。Mladen Guteshaの指揮により、厳かにMembers Of Südfunk Symphony Orchestraによる演奏が始まる。 Solist Christian HedrichのViolaとHelmut GeigerのViolinが悲しみに満ちた旋律を奏でるとTerje RypdalのLong Toneのギターが咽び泣く。それは心なしかStarlessなKing Crimson的な世界を思い起こさせる。
(Hit-C Fiore)