Gordon名義でリリースされた、この実に渋いジャケットのアルバム。Gordonとは、60年代に活躍した英国出身のDuo Peter and GordonのGordonことGordon Wallerである。64年の2月にリリースされ全英と全米で首位を獲得したDebut Singleにして大ヒット曲“A World Without Love(邦題愛なき世界)”は当時Peter Asherの妹で女優としても知られるJaneと交際していたPaul McCartneyがLennon–McCartney名義で書き下ろした名曲である。所謂British Invasionが全米で巻き起こり、英国から登場したGroupが全米Chartを席巻することになる、その先鞭をつけたとも言われるこの曲は、British Beat Bandとはまた違った、Beatよりも独特の透明感のあるHarmonyを生かした彼らの個性が際立つ曲であった。その後米国に拠点を移した彼らではあったが、残念なことに68年に解散してしまう。その後、Peter AsherはApple RecordsのA&R部門の責任者となり、無名であったJames Taylorと契約してProduceまで手掛け、Appleを退社してTaylorのManagerとなって米国に移住後の活躍はご存知の方も多いだろう。一方のGordon WallerことGordon Trueman Riviere WallerはScotland生まれで子供の頃に家族がMiddlesexに移住してWestminster Schoolに入学した頃に同級生のPeter Asherと出会ってDuoを結成している。解散後はソロとして活動を開始し、本作をリリースするのである。Produceを手掛けたのはNorth Dakota生まれのSwampの旗手Thomas Jefferson Kaye。Thomas Jefferson KayeがギターやVocalも担当し、キャリア初期に組んでいたバンドWhite CloudのメンバーやMulti-InstrumentalistのEric Weissbergが参加した演奏陣も味わい深いSwampの香り漂う演奏で本作をBritish Swampの名盤に仕上げている。
『Gordon』はGordonがVertigoから72年にリリースしたアルバム。米国盤ではタイトルが『...And Gordon』となり、ジャケットも変更されているがどちらもイイ味を出している。
アルバム1発目は“The Saddest Song”。タメのきいたリズム隊にのってイントロのギターとGordonのVocalが登場すると、もうたまらない。極上のBritish Swamp。
“At The End Of The Day”はBeatlesの影響下にある英国の香りが漂うナンバー。GordonのScatやピアノもイイ感じで、アルバムの中にこういう曲があるとグッと奥行きが出ますなあ。
BluesyなギターのRiffで始まるLoudon Wainwright IIIの“Be Careful, There's A Baby In The House”はドッシリとタメのきいたリズム隊にのったGordonのLazyな歌いっぷりも良し。ギターもピアノもSwampの香りが濃厚で、Fiddleもイイ味を出していてご機嫌な英国の中の亜米利加路線。
“I Won't Be Your Ruin”はイントロのピアノがグッとくる。哀感に満ちたピアノと歌うギターをバックにGrodonがしっとりと歌い上げるBallad。
Thomas Jefferson Kayeが73年にリリースした1st Albumに収録されていた“Collection Box”。ここでもFiddeleや女性Chorusがイイ味を出していてGordonのVocalも渋い。
上述のWhite Cloudが唯一残したアルバム『White Cloud』に収録されていた“Rocky Roads To Clear”。完全に英国の中の亜米利加で、メンバーが実に楽しそうにやっているのが良い。
イントロのPedal Steelがイイ感じの“When This Whole Thing Began”。このアルバムで一番好きな曲。GentleなGordonのVocalと抑制のきいたバックの演奏が素晴らしい。
“Stranger With A Black Dove”はThomas Jefferson Kayeら男女Chorusを従えてGordonが力強く歌い上げる。GordonとPeter Asherとの共作。
アルバム最後をシメるのは優美なArpeggioで始まるギターの弾き語り“Before You Go To Sleep”。
(Hit-C Fiore)