Lou Donaldsonのアルバムはついつい買ってしまうのであった。それも50~60年代ではなくて、一般的にはコアなJazz ファンから見向きもされないBlue Noteに残した70年代の作品である。73年に公開された大好きな映画のTheme曲"Long Goodbye"が収録されているからという理由でStringsがベタ甘口な同年リリースの『Sophisticated Lou』なんかを買ってしまったのが運の尽きだった。Wade MarcusをArrangerに迎えてStringsやHarpが入って鍵盤がOrganからエレピに変わったベタベタに甘口の演奏をバックにLou Donaldsonは実に気持ち良さそうに吹きまくっているのであるが、もう殆ど歌のない歌謡曲状態というか、Stevie Wonderの“You Are the Sunshine of My Life”からStandardの“Stella by Starlight”や“Autumn in New York”まで、さすがにコレはやり過ぎではあろう。本作はそれに続いて同じ73年にリリースされたアルバム。前作辺りは、もはや60年代のJazz Funk路線からも遠く離れたところに来てしまった感があるけれど、本作ではHorace OttとGeorge ButlerをProducerに迎えて、Thad JonesのTrumpetとGarnett BrownのTromboneにSeldon PowellのTenor Sax/Fluteをフロントにしたあたりで前作よりは持ち直した感がある。しかし、これはもはやJazzではない。大好きなWilbur Bascomb のベースにBernard Purdieのドラムス、そしてPercussion奏者としてM'BoomのOmar ClayにJack Jenningsというリズム隊は心地良いリズムを叩き出すがJazzではない。鍵盤には名手Paul Griffin、Horace Ottはエレピを弾いている。そして、何よりギターにHugh McCracken,、David Spinozza、John Tropeaという当時売れっ子のSession Musicianを3人も揃えているのが印象的だ。肩の力を抜いたLou Donaldsonの吹きっぷりは相変わらずで、それを楽しむために自分んはこの盤を時々取り出している。そうなのだ、Jazzであるかどうかなど関係なく、Relaxしながらも、淀みなく流れるようなフレーズを次から次に繰り出すLouさんのAltoを楽しんでいるのである。
『Sassy Soul Strut』はLou Donaldsonが73年にBlue Noteからリリースしたアルバム。New York CityのGeneration Sound Studiosで録音されている。
アルバム1曲目は72年に放映されたTV Drama『Sanford and Son』のTheee曲“Sanford And Son Theme”。とにかくWilbur Bascomb のぶっといベースに導かれて始まるお気楽Jazz Funk。
Sylvia Robinson)の“Pillow Talk”は、やっぱり曲が最高っすなあ。この楽曲が持つ甘美でエロい雰囲気をLou DonaldsonがOrganをバックにイイ感じで歌い上げている。実に気持ち良いっすなあ。
Horace Ott作のアルバムタイトル曲“Sassy Soul Strut”。派手に鳴らしまくるフロントのHorn隊にぶっとくウネるWilbur Bascombのベースがご機嫌である。こうなりゃLou Donaldson節も全開である。
Billie Holidayの名唱で知られるStandard“Good Morning Heartache”。Lou Donaldsonの咽び泣くAltoは、まあやっぱりそうくるかと思ってしまうものの、この男泣きは期待を裏切らない。
“City, Country, City”はPaul GriffinのOrganとBuddy LucaのHarmonicaが実にイイ味を出している。重心の低いタメのきいたリズム隊にのってイナタさ全開である。
米国のSa奏者Joe Holiday作の隠れた名曲“This Is Happiness”が飛び出す。Latinなノリの原曲とはうってかわてジックリ腰を落として歌い上げる。エレピも悪くない。Paul Griffinのピアノ・ソロもイイ感じ。
アルバム最後をシメるのはDonaldson自作の“Inner Space”。これだよ、コレという感じのHard-Boiledに咽び泣くAltoがたまらんすなあ。
(Hit-C Fiore)