◎Alfie/Burt Bacharach
Burt Bacharachも旅立ってしまった。The Stranglersの“Walk on By” (Dave GreenfieldのHammondが最高!)で初めてBacharachの曲に意識して接し、Mari Wilsonの“Are You There With Another Girl?”を聴いてBacharachのChordとMelodyの魅力に憑りつかれてしまったPunk上がりではあるが、遅ればせながら、この偉大な音楽家に哀悼の意を表したいと思う。おそらく子供の頃に父の運転する車の中で何回も聴かされたであろうBurt Bacharachの音楽は、知らず知らずのうちに身体の中に沁みつき、その記憶から呼び起こされるものがあるのか、どこか懐かしさを感じさせ幸せな気分にさせてくれたものだ。ユダヤ系のボンボンで大金持ちのPlayboyと思っていたBacharachだが、アルバム『At This Time』で当時のブッシュ政権に対して激しい怒りをぶつけて批判した時、戦争を煽り自由と平和を脅かす愚か者には黙っていられない芸術家魂を感じ、Bacharachもまた平和を愛するからこそ、あんな多幸感溢れる素晴らしい曲を書けるんだと思ったものだった。
Major Seventh Chordを多用しMelodyもDiatonic Scaleの範疇にとどまるものが多かったBacharachの曲は、Punk以降にさまざまな音楽を経験し刺激を求めていた自分にとっては、少々お行儀のよいものであったが、Chord Progressionがかなり捻りのきいたものであったり、相棒Hal Davidの深みのある歌詞と相まって、そのMelodyから生み出される映像的な拡がりがたまらなく魅力的であった。
珍しく歌詞が先で後から作曲したという“Alfie”は確かに名曲中の名曲であろう。Dim7(Diminished Seventh)を使って転調や偽終止を駆使したChordのMagicはさすがのBacharach。ChordにDiatonic Scale外のNoteをTesionとして使いつつMelodyは♭IIIをRootとするDim7をPivot Chordとして転調し、転調KeyのVIIと♭VIを使いAメロ主音のDiatonic Scale外の♯IVや♭IIIとして浮遊感に満ちたMelodyを歌わせる。Rootの♭9thをMelodyに使う大技もあり。この曲をSimpleにピアノでChordを弾きながらMelodyを歌った時の気持ち良さといったらない。そして、今、この時代こそ心に強く訴えかける歌詞も素晴らしい。「今だけ、金だけ、自分だけ」「言ったもん勝ち、やったもん勝ち、騙したもん勝ち」が平気で蔓延る今の日本に、この歌詞は痛烈に響く。歌詞に合わせてAメロを変則的に10小節にしているが、この憂いを含んだ美しいMelodyも歌詞にバッチリだ。さすがBacharach Magic!
70年代に入りSteely DanやGentle Giant、極めつけはPascoalやGismonti、GuingaらがHybridで斬新な感覚のChord ProgressionとMelody、Rhythmで可能性を拡げ、究極まで突き進んでいったが、60年代にBacharachは複雑なChord Progressionと変拍子を使ってPopular Music界に君臨していたのだ。幼少時からClassicalな教育を受けつつJazzに興味を持ち、Les Six(フランス6人組)の一人でBrazil音楽やTango、Jazzに影響を受けた作曲家でもあるDarius Milhaudに学び、「口笛で吹けるようなMelodyを書くことを恐れるな」との教えを守ったBacharachならではである。
◎Alfie (1966) - End title
66年に公開された映画ではCilla BlackでもDionne WarwickでもなくCherが歌っているのが興味深い。Bacharachはお気に召さないらしいが、個人的には結構イイ感じ。
◎Alfie/Trijntje Oosterhuis&Leonardo Amuedo
◎Alfie/Bill Evans
◎Montreux II/Bill Evans
Bill Evansが弾く“Alfie”は70年にリリースされたLive Album『Montreux II』に収録されている。また74年の演奏を収録した『Re: Person I Knew』でも聴くことが出来る。
さようなら、ありがとうBurt Bacharach…
(Hit-C Fiore)