Live At The Lighthouse/Lee Morgan | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

 今年の発掘音源はLee Morganの『Complete Live At The Lighthouse』、Charles Mingusの『Mingus At Carnegie Hall』の完全版Deluxe Editionという歴史に残る70年代の大傑作Live Albumの完全版がリリースされたことが個人的には心に残る大きな出来事であった。Lee Moganの『Live At The Lighthouse』は70年の7月10日から12日にかけて、Mingusの『Mingus At Carnegie Hall』は74年の1月19日に行われたLive演奏を収録している。60年代末~70年代にMiles DavisやHerbie HancockのようにRockやFunkの要素を取り入れたStyleには目もむけず、あくまでもHard Bopの新たな地平を切り開こうとしていたMingusはともかく、Lee Morganの同時代の作品はどうであったか?Lee Morganは61年に去ることになったArt Blakey's Jazz Messengers時代の作品(同時期のリーダー作含む)、または一時、一線を離れて帰郷していたPhiladelphiaからNew Yorkに戻り見事に復活を遂げた大ヒット作The Sidewinder』といったあたりが常に代表作として語られてきたこともあり、晩年の作品につては多くを語られることはなかったように思われる。56年若干18歳で名門Blue Noteに録音した初リーダー作Lee Morgan Indeed!』から鮮烈にHard Bop黄金時代を駈けぬけていったが、おクスリ関係で身を崩し『The Sidewinder』で再起するも、またしても手を出した麻薬のために演奏もままならないどん底状態に陥ったLee Morgan。しかし一人の女性との出会いがMorganを再び立ち直らせ真摯に音楽に対峙していくようにさせ、African AmericanのIdentityに覚醒したMorganが、Hard Bopの先にある新たな可能性を仲間たちと模索していく姿が、このLive Albumから感じ取ることが出来る。そして、完全版が出たことによって、この時のMorganはStoicに練習を重ね、70年の7月に襟抜きのメンバーとCaliforniaの海に面したSea Sprite Hotelに泊まってHermosa BeachLighthouse Café3日間毎晩4Setの素晴らしい演奏を緊張感途切れることなく繰り広げていたことが明らかになったのだ。

 

 『Live At The Lighthouse』はLee Morgan71年Blue NoteからリリースしたLive Album。発売された当時はレコード2枚組片面1曲のみ全4曲であった。ピアノには、今年発掘されたもうひとつの大傑作Roy Brooksの『Understanding』でも弾いていたHarold Mabern、ベースにJazz Messengers時代からの盟友Jymie Merritt、そして68年Modeなんて、やろうと思えばいつでもできまっせ的なナンバーを収録したSerenade To A Soul Sister』をリリースしたHorace Silver Quintetから前作『Caramba!』でMorganと組んだTenor Sax、Flute、Bass ClarinetのBennie Maupinに加えてドラムスのMickey Rokerが参加している。それぞれが信頼し合った固い絆で結ばれ、録音に際して十分な準備日々のStoicなSelf Controlを律して万全な状態で臨んだ3日間のStage。4曲はMerritt、Mabern、Maupinの手による楽曲でMorgan作曲のナンバーは含まれていなかった。全12SetのStageの模様を収録した完全版では“The Sidewinder”や“Speedball”といったMorganの曲も収録。こちらの演奏がStudio盤と比べものにならない位白熱したものとなっている(リズム隊が圧巻である)。以前ご紹介したHarold Mabern作の“I Remember BrittBennie Maupin作の“Peyote”、“Yunjana”、といった優美で躍動感に満ちたナンバーも収録されている。

さて、アルバム一発目はJymie Merritt作の“Absolutions”。Max Roach68年の大傑作『Members, Don't Git Weary』の最後を飾った名曲である。Bennie MaupinがキレキレのBlowを聴かせてくれる。

Harold Mabern作の“The Beehive”。5人が一体となった躍動感が半端ない

Bennie Maupin作の“Neophilia”。Bass ClarinetDarkで硬質な美しさと妖しさを持った世界を描き出す。

アルバム最後をシメるのはJymie Merritt作の7拍子躍動する名曲“Nommo”。こちらもMax Roachの大名盤『Drums Unlimited』収録曲。静と動のContrastが鮮やかなこの曲でMorganは未来に突き抜けていく

(Hit-C Fiore)