And It Came To Pass/Warm Dust | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

 Paul Carrackはお気に入りのMusicianであるが、その存在を始めて知ったのは大好きな英国のバンドSqeeze81年にリリースされた傑作『East Side Story』である。そこに収録されていた名曲中の名曲“Tempted”は自分にとって大げさでなく衝撃的だった。楽曲こそGlenn TilbrookChris Diffordの名コンビによるものであったとはいえ、この曲でのCarrackのSoulfulなVocalとOrganが絶品であり、一発でSqeezeに新加入したメンバーの虜になってしまったのだ。そしてCarrackがSqeeze参加前のバンドにも興味を持って、早速追いかけたのはいうまでもない。そこで出会ったのがAce、そしてこのバンドWarm Dustであった。Sheffieldで70年代初期に結成されたWarm DustはCarrackがプロのキャリア初期に参加していたバンドで、アルバム3枚を残し72年に解散している。解散後にベーシストのTerry "Tex" Comerと、Mighty BabyのギタリストAlan Kingらと結成したのが5人組のAceである。そこでCarrackはFrontmanとしてVocalと鍵盤、メインのSongwrietrとして大活躍、“How Long”というヒット曲を生んだ。ご存知の通りCarrackは優れたBritish Blue-Eyed Soul SingerありSongwriterであるが、鍵盤奏者としての実力も折り紙付きであり、またMulti-Instrumentalistでもある。Aceとは異なりWarm DustではLes Walkerという専任のVocalistがいたため、残念ながらCarrackは鍵盤奏者としての活躍がメインとなるが、Hammondビシバシで、これが良いのである。本作は70年Trendからリリースされたデビュー・アルバムで2枚組の大作である。CarrackとComer、Walker以外のメンバーはJohn SurguyAlan SolomonというSax、Flute、Oboeも演奏するMulti管楽器奏者をフロントに、Dave Pepperのドラムスという6人組である。続く2ndアルバムの『Peace For Our Time』も中々の傑作である。

 

 『And It Came To Pass』はWarm Dust70年にリリースしたアルバム。

アルバム1発目“Turbulance”はLyricalなFluteとHammondが素晴らしい効果を上げている11分越えのJazz Rock。SaxのFreakyなBlowも中々良し。

Brass隊がOrganと共にイントロから畳みかけるAchromasia”。SaxとHammondがAggressiveに迫ったりスリリングな局面もあるが、根底は英国らしい陰影のあるJazz Waltz

Circus”は幻想的な2本のFluteChorusから始まる、これまた抒情的でBluesyな英国の香りがたまらないナンバー。Vocalが結構歌い上げるが、ベタにならないのはFlute二重奏など洗練されたバックの演奏とChorusによるものである。

CarrackのFunkyに転がるBoogie-Woogie Pianoがお見事な“Keep On Trucking”。気分は米国はChicagoのBarrelhouse。Bluesyな歌と演奏がご機嫌ですなあ。

アルバム・タイトル曲“And It Came To Pass”は英国人らしい凝りまくった構成のナンバー。次々と曲が緩急自在に展開し、SaxソロやFluteソロ、Hammondが小気味よくキメまくっている。

浮遊感漂うLoosing Touch”はアルバムで一番のお気に入り。これまた緩急自在の展開Fluteが大活躍。

SaxのRiffが面白い“Blues For Pete”。WalkerのHarpもイイ感じ。

ノリノリだがBritishな哀感が漂う“Man Without A Straw”。

浮遊感が心地良いWash My Eyes”は14分越えの大曲。CarrackのFunkyなHammondソロが最高。

アルバム最後を飾るのはRichie Havensの“Indian Rope Man”。これまたHammondが激カッコイイJazz Rockに仕上がっている。

(Hit-C Fiore)