Wishbone Ash/Wishbone Ash | BLACK CHERRY

BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

 Wishbone AshとTraffic、Status Quoが大好きな理由は英国のTraditional Musicの香りが、彼ら独自の音楽性から少なからず漂ってくるところである。そうなると、Wishbone Ashに関しては圧倒的に初期が好みということになるのである。ところがどっこい、徐々に米国音楽の影響が出始めていく70年代半ば以降のAshも実は大好きなのであった。それでも、Ashの好きなアルバムをどれか1枚選ぶとなると非常に難しいが、やはり初期の作品となる。聴いた回数からすれば、70年にリリースされた彼らのデビュー・アルバムということになるのだろう。なんといっても怖いもの知らずの荒々しさ瑞々しさが同居し、Ashの個性ともいうべき抒情性に満ちたツイン・リードが胸に迫ってくるのが良い。後のアルバムの完成度や力強さや洗練、独創性、英国的美意識に基づいた構成力、スケールの大きさには及ばないものの、BluesJazzClassicalな要素に英国人らしいTradを取り入れ詩的で抒情的な世界を展開するWishbone Ashらしさがほぼ確立されている。Live感溢れるサウンドも粗削りながら若々しさに満ちた意欲と熱気が伝わってくるところが個人的にはツボである。ギターはTed TurnerAndy Powell、ベースにMartin Turner、ドラムスにSteve Uptonという4人組。VocalはMartinとTed、Andyというフロントの3人が担当するがメインはベースのMartinである。決して上手いとはいえないが、Ashの陰影に富んだ繊細で哀感漂うサウンドには、むしろこういった、儚げで線が細いVocalの方がマッチしているかもしれない。演奏はツイン・ギターの流麗なEnsembleぶっとくウネるMartinのベースにRollを多用したSteveのドラミングというAshの個性が生かされ、B面でもAshの初期の代名詞となるインスト部の劇的な展開も登場している。2本のギターがハモるRiffがたまらない“Lady Whiskey”やBluesをベースにしながらもPentangleやFairport Conventionを愛し影響を受けたギタリストAndy Powellの色が出た“Errors Of My Ways”も良いが、なんといってもB面の長尺2曲が最高である。

 

 『Wishbone Ash』はWishbone AshがMCAから70年にリリースしたデビュー・アルバム。

アルバム1発目はいきなりBluesyなツイン・リードが炸裂する“Blind Eye”。この曲のみ参加したProcol HarumのMathew FisherFunkyに転がるピアノが見事にキマっている。Ted Turnerの初々しいVocalもSteve UptonのRollを多用してDriveするドラミングもイイ感じのご機嫌なSuffle

Lady Whiskey”もツイン・リードを生かしたBluesyなRiffが激カッコイイ。そして優美にハモるツイン・リードがグッときますな。TempoをUpしたり落としたりする緩急自在のリズム隊をバックに吼えまくるAndyのギター・ソロも良し。“Errors Of My Ways”はTradなイントロから心を掴まれるナンバー。2人のVocalがハモる旋律、Tedの優美なギター・ソロ、どこをとっても英国的なLyricismに満ち溢れていて素晴らしい。

Queen Of Torture”はHardにキメるShuffleで、Aggressiveに突き進んでいく感じが良い。

B面は10分越えの長尺2曲。Martinのベース・ソロから始まる“Handy”。このソロもテクニックでガンガン攻めるというよりは哀感漂う旋律を重視しているのがAshらしい。続いて2本のギターによる繊細で典雅なEnsembleが鳥肌モノ。再びベース・ソロを挟んでTempo Upすると一転して4人の熱気を孕んだ演奏が激しく交錯し、深遠な世界へ導かれていく。この辺の見事な展開はグッときますな。SteveのExcitingなドラム・ソロを挟んで、今度はJazzyな要素も飛び出す。後半の気合の入ったScatもRockな熱さが感じられて面白い。

アルバム最後を飾るのは後々Liveで演奏されていく名曲Phoenix”。イントロの美麗なギターの絡みが素晴らしい。そしてVocalも英国的な詩情を湛え、2本のギターが流麗に絡み合いながら静かに、しかし劇的に盛り上げていく。そして緩急自在Shuffleなども取り入れたRhythm Cahngeが炸裂する中、タイトルのごとく生命感躍動感に満ちたEnsemble英国的としか言いようがない陰影に富んだ世界を生み出していく。

(Hit-C Fiore)