オランダのSolutionというバンドは少々甘口のJazz Rockというイメージで語られることも多い。SaxとFlute、エレピやピアノ、オルガン、Synthesizer主体のインストが中心となるバンドで、71年に本作でアルバム・デビューして、徐々にMellowなサウンドとアルバムに1曲は必ず含まれるGentleなVocalをFaetureした歌モノの存在感が増していくようになった。ギターレスの編成で、初期のアルバムでは変拍子などもまじえたリズム展開に多少強引な部分も見受けられるとはいえ、時代的にPsychedelicな残り香に加えてそこはかとなく漂うCanterburyの香りが個人的なツボでもあり、結構ターン・テーブルにのせることが多かったりするバンドである。60年代からキャリアを積んできたベースとVocal担当のPeter van der Sande、ドラムスのHans Watermanによるリズム隊が派手さこそないものの、変幻自在なリズム・チェンジを堅実にこなし、Willem EnnesがJazzやClassicalな要素を取り入れたピアノやエレピ、Synthesizerで、Tom BarlageがSaxやFluteで彩を添えていく。インストはスリリングなインプロやゴリゴリにテクニカルな部分を前面に出すわけでもなく、基本は浮遊感のある心地良いサウンドを目指しているようである。Vocal曲もその流れであろう。確かに毒にも薬にもならない軟弱なFusionやえーおーあーるに一歩間違えば陥りかねないギリギリの線ではある。とはいえ、よく聴きこんでみればMysteriousで都会的洗練も増していく後期のサウンドでも、楽曲、アレンジで捻りがきかされており、凡百のJazz Fusionとは一線を画している。その辺の掴みどころのなさが、実力のわりにあまり評価されていない原因かもしれないが、個人的には彼らが70年代に残したアルバムは、どこかCanterburyの香りが感じられて好感が持てるものである。
『Solution』はSolutionが71年にリリースしたアルバム。
アルバム1発目“Koan”はOrganとSaxがガンガンかますイントロで始まる。Aggressiveに進みつつSaxソロの部分は雰囲気たっぷりになるところが後の彼らを示唆しているようで興味深い。刻々と変化するリズムにのってFluteや欧州的なMelodicismを感じさせるベースも中々心地良い。途中でDave Sinclairを思わせるFuzz-Organも登場するが、マッタリとした浮遊感にのって、イントロが嘘のような緩めの演奏が続いていく後半部が意外に気にっている。仄かに漂うCanterburyの香りがキモなのかもしれない。
典雅かつ欧州的なRomanticismを感じさせるピアノとOrganによる短い曲“Preview”。意外なことに鍵盤のWillem EnnesではなくSax奏者Tom Barlageの作品。
Mysteriousなイントロから惹きこまれてしまう“Phases”。ここでも浮遊感にに満ちた音世界が展開され、Fluteに幻惑される。そんな夢見心地に浸っていると突如、ELP風のキメが入ってVocalが登場するとBritish Rockな展開に。12分越えの大曲。
ClassicalなOrganから始まるこちらも10分越えの大曲“Trane Steps”。派手さこそないがWatermanのドラミングが中々効果的である。後半のSaxソロもイイ感じ。
アルバム最後をシメるのはParis生まれの作曲家Jacques Ibertの曲を引用した“Circus Circumstances”。ピアノで始まるけたたましく疾走するHumotousな導入部からカッコイイFuzz-Organが炸裂、この辺の展開はSupersisterを思わせる。SaxとOrganのUnisonによるThemeのRiffをキメつつ、Saxソロをまじえて本領発揮。
(Hit-C Fiore)