Nasci Para Bailar/Nara Leão | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

  80年代のNara Leãoのアルバムはもっと評価されてもいいんじゃないかと思う。個人的にはNaraとの最初の出会いはこの時代の作品であった。当時の自分はTracey Thornの『A Distant Shore』やEverything But the Girlの12", Single“Night And Day”で火がついて、さらにPual Weller先輩の影響もって急速にBossa NovaLatin音楽に興味を持ち始めていた頃であった。そこには懐かしくて心地良く、当時尖りまくっていた自分をPositiveで素直に、Happyな気分にしてくれるものがあった。それは幼い頃に父親の車の中で聴かされていた音楽であったからかもしれない。思えばAstrud Gilbertoセルメンなど、物心がつくかつかない頃から車の中で映画音楽やSatchmoなんかと一緒にずっと聴かされてきたのだ。さて、80年代のNaraのアルバムは内容は素晴らしいのに60年代の作品に比べてジャケットが何とも残念だったりするのだが、騙されたと思って一度は聴いていただきたいものだ。本作はAntonio Adolfoと2曲のみだがJoão DonatoをArrangerとして起用した作品であるからして、その中身は折り紙付きである。しかも、この2人の楽曲に加えてCaetano Velosoや大好きなPaulinho Tapajós、Naraの69年作『Coisas Do Mundo』のProducerでもあり、60年代からその楽曲を取り上げてきたSidney Miller、70年代から活躍している兄弟DuoのKleiton & KledirKledir RamilOs Mutantes出身のピアニストTúlio MourãoからCubaのSinger-SongwriterNueva Trovaの旗手として人気のあるSilvio Rodríguezまで中々魅力的な楽曲が勢ぞろい。NaraのCoolで素朴なVocalも円熟と良い意味でのRelaxしたマッタリ感が何ともいえない味わいを感じさせる。AdolfoとDonatoのArrangementsも時代柄、甘美な部分を感じさせる部分もあるも冴えまくりである。

 

 『Nasci Para Bailar』はNara Leão82年にリリースしたアルバム。

アルバム1発目“Nasci Para Bailar”はJoão Donato作のマッタリゆっったりしたナンバー。女性ChorusStringsにのってNaraが心地良く歌っている。

続いては軽快なRhythmにのったTromboneがイイ味を出しているSidney Miller作の“Pede Passagem”の再演。66年リリースの同名アルバムに収録されていた素朴な仕上がりも好きだけど、こちらも最高。高揚感が徐々に高まっていくところが素晴らしい。でも鬼才MillerのVersionには敵わないのは仕方ないかも。

Caetano Veloso作の“Luz Do Sol (Tema Do Filme "INDIA")”はNaraの優しい歌声に心が安らぐ。

CubaのSilvio Rodríguezの“Supõe (Supon)”。この辺のLatin音楽へのアプローチはさすが。

Kleiton & KledirKledir Ramil作の“Maravilha Curativa”。こういう素朴な曲はNaraの歌声が心地良い。

Paulinho TapajósSiuca共作の“Tou Com O Diabo No Corpo”。これまた楽しい仕上がり。

再びKledir Ramil作の“Questão De Tempo”。これまた切ないメロディを丁寧に歌い上げていくNaraの素朴な歌声がイイ感じ。

Elton Medeiros作のご機嫌なSambaManto Negro”。

João DonatoMartinho Da Vila作の“Gaiolas Abertas”はDonato節炸裂のChorusとHorn隊の絡みが気持ち良すぎるナンバー。

再びSilvio Rodríguez作“Imagina Só (Imaginate)”。どこか寂しげで独特の味わいのあるナンバー。

Boca LivreDavid Tygel作の“Caso Do Acaso”。高揚感に満ちた大好きな曲。

Antonio AdolfoとPaulinho Tapajós共作の“Penar”はSanfonaの響きがご機嫌な名曲中の名曲。

アルバム最後をシメるのはOs Mutantes出身のピアニストTúlio Mourão作の“A Primeira Sentença”。これまたNaraが美しい旋律を心に染み入るように歌い上げていく。

(Hit-C Fiore)