英国のStrayというバンドは不思議な魅力を持っている。平均年齢18歳で名門Transatlantic Recordsと契約し70年にデビュー・アルバム『Stary』をリリースしている。若さゆえの暴走というか、荒削りで未消化の部分もあるとはいえ、これが中々面白いアルバムとなっている。英国特有の翳りとPsychedelicで浮遊感のあるサウンドにHardでAggessiveなギターがRiffをガンガンかませたり、時に幻想的なAcoustic Guitarが登場したりして独特の雰囲気がイイ感じだ。Blues RockやPsychedelic Musicを二大源流としたHardなギターを前面に出した英国独特の多様性と抒情性を持ったバンドが数多く誕生した60年代後半から70年代前半を象徴する作品である。案の定、その後のStrayは次作でMellotronを大胆に導入したかと思えば、73年にリリースされた4thアルバム『Mudanzas』ではHornやSringsも取り入れた作品で音楽性を拡げていく。同時にPopでCatchyな音楽性も徐々に強まっていく。しかし、その根底にあるのはThe Beatles以来の伝統である英国的な抒情と捻りを持った旋律である。Andrew PowellがArrangementsにかかわった同作での少々やり過ぎな管弦楽器の導入から一転して、続く本作では装飾は控えめで多彩に攻めるギターを軸にしながらも幅広い音楽性が発揮された英国の香り漂う作品となっている。ギターとMellotron、Hammondを演奏するDel Bromham、VocalとギターのSteve Gadd、ベースのGary Giles、ドラムスのRitchie Coleというデビュー・アルバム以来不動のメンバー4人体制最後の力作であり、彼らとTransatlantic Recordsとの契約最後の作品となった。ちなみにPye移籍後のStrayのアルバムも中々面白いが、これは後日ご紹介する予定。
『Move It』はStrayが74年にリリースしたアルバム。
アルバム1発目はRitchie Coleのドラム・ソロによるのInterludeのような“Tap”。
続くタイトル曲“Move It”はIan Samwell作のCliff RichardのDebut SingleのCiver。Tempoを落としてタメのきいたリズム隊をバックにHardなRiffを前面に出したご機嫌な仕上がりである。最高。
ワクワクさせるイントロから惹きこまれる“Hey Domino”は歌メロがCatcyでありながら展開に捻りもある英国らしさが出たナンバー。immy Helmsの典雅なBrassも素晴らしい。ギター。ソロも最高。
米国生まれで英国で活動した作曲家/歌手Jimmy Helms作の“Customs Man”は作者本人のChorusやAndrew Powellの手によるStringsが加わったPsychedelic Popなナンバー。
“Mystic Lady”はThe Beatlesの影響が感じられるPopなナンバー。VocalのGaddの作品。
激カッコイイRiffで始まる“Somebody Called You”。ギターのBromham作のこの曲もBeatlesの遺伝子が感じられる。
BluesyなBallad“Give It Up”もVocalがJohn Lennonを思わせるところがある。
“Like A Dream”もHammondが隠し味に使われたPopなナンバー。
Rimshotで始まる“Don't Look Back”はSwamp風味のギターとGaddの脱力した気怠いVocalがイイ感じのナンバー。
疾走感に溢れる“Right From The Start”。攻めまくるギターRiffにCatcyなChorusもイイ感じ。ギター・ソロも突き進むベースもカッコイイ。
最後を飾るのはGadd作のアコギが冴えるBritish Popな“Our Plea”
(Hit-C Fiore)