Brazilian Jazz Quartetは、まあ、ド直球な、いかにもなGroup名なわけだけど、60年代前半に所謂Jazz Sambaと呼ばれる音楽がBrasilで数々の素晴らしい作品を残していく黄金時代より少し前、50年代後半にUndergroundで活動していたQuartetで、南米のJazzの歴史を紐解いていく時に、彼らのような存在がいたことは割と重要だったりするのである。本場米国のJazz、それは、40年代のBe Bop革命の後の50年代のHrad BopやWest Coast Jazzの隆盛がBrasilにおいても影響を及ぼし、多くのJazz Samba Groupにその音楽的影響の大きさを感じることができる(50年代から米国のJazzとBrasilの音楽は相互に影響を与え合ってきたともいえる)。Bossa Nova発祥の地ともいわれるRio de JaneiroのBeco das Garrafas(酒瓶の袋小路)で、São PauloのNight Clubで夜な夜なMusicianたちがJam Sessionを繰り広げながらJazzとBrasilの音楽は幸せな蜜月時代を続けていくのである。Brazilian Jazz Quartetは、そんなJazz Samba前夜の姿を如実に伝えている。後にZimbo Trioを結成する2人、BassistのLuiz ChavesとDrummerのRubinhoことRubens Alberto Barsottiに、Brazilian Elvis Presleyなんて呼ばれて50年代に活躍したSinger Cauby Peixotoの兄弟のPianist Moacyr Peixoto、そして渡辺貞夫の『Sadao Meets Brazilian Friends』にも参加しているAlto Sax奏者CaséことJosé Ferreira Godinho Filhoの4人によるBrazilian Jazz Quartetが残した、このアルバムは貴重である。ジャケットに写る4人も実にイイ感じ。インプロで各メンバーが火花を散らすHard BopというよりはCaséのArt Pepperを思わせる軽やかに歌い上げるAlto Saxもあって爽やかで洗練されたWest Coast Jazzの味わいが感じられる。
『Coffee And Jazz』はBrazilian Jazz Quartetが58年にリリースしたアルバム。
アルバム1発目はBing CrosbyやChris Connorの名唱でも知られる“The Lonesome Road”。PercussiveなTamの連打と小洒落たピアノとSaxが米国に古くから伝わるこのFolk Songを踊れるJazzに仕上げている。
31年公開の映画『Blonde Crazy』にも使用されたStandard“When Your Love Has Gone”はご機嫌な指パッチンJazzで楽しませてくれる。
Duke Ellingtonの“Cop-Out”はピアノの小気味よいBlock Chordによるイントロから始まる疾走感に溢れる男前Jazz。
George Shearingの“Black Satin”は原曲のCocktail Jazzな味わいを小粋なWest Coast Jazz風にキメている。Caséの歌うAltoが良いっすなあ。
Musical『Whoopee!』に使用されたStandard“Makin' Whoopee”も鯔背なSaxと優美なピアノがイイ感じ。
Doris Dayの名唱で知られる“No Moon At All”もご機嫌な指パッチンJazz。Moacyr Peixotoの転がるようなピアノ・ソロが良い。
“Old Devil Moon”はAfro-Cubanなイントロから入ってくるところから聴かせますなあ。CaséのAltoも心地良く歌いまくり。
Ellingtonの“Don't Get Around Much Anymore”はRelaxしたマッタリ具合が気持ち良い。こういう寛ぎのJazzは年を重ねるたびに好きになる。
Standard“You'd Be So Nice To Come Home To”。軽やかに歌うSaxが良い。
日本人好みのStandard“I Will Close My Eyes”は、やっぱりグッときますなあ。
Nacio Herb Brown作曲の“Alone”はマッタリ寛ぎのJazz。
最後を飾るのはHard-Boiledにキメた“Too Marvelous For Word”。
(Hit-C Fiore)