こういう摩訶不思議、意味不明のジャケットにはどうしても興味を惹かれてしまうのである。ジャケットに表記されているP.C. Kentはタイトルなのか、それとも同名の人物なのかバンド名なのかよくわからないが、裏ジャケットには『Upstairs Coming Down』なるタイトルと4人のメンバーの写真と名前がクレジットされている。大好きなAndy Roberts周辺のMusicianであるDave Richardsが参加しているだけでも個人的にはポイントが高いのであった。P.C. Kentとは、おそらく71年にB & C RecordsからAndy RobertsやRoger Powell、Tony Reeves、Tim Renwickという豪華なメンツがバックをつとめたソロ・アルバムをリリースしているPaul KentというSinger-Songwriter/鍵盤奏者が中心になっていたに違いない。なぜならKentが全曲手がけてLead Vocalまでとっているのだから。この4人編成のメンツは、Kentの鍵盤、VocalにベースとAcoustic Guitar、Lead GuitarのGavin Spencer-Watson、ドラムスにJohn Ward、鍵盤にベース、Acoustic GuitarのRichardsonである。面白いことにKentとRichardsonはHarpsichordも弾いている。またKentのVocalを中心に他の3人もいかにも英国的なChorusで彩を加えている。本作はKentの弾くピアノを中心に曲調やChorus、Harpsichord、Acoustic Guitar、Orchestration(1曲のみだがDavid PalmerがArrangeしている)や効果音の入れ方など正に英国的としかいいようがない作品に仕上がっている。JazzやTrad、Baroqueな要素を取り入れながら、Bluesyな味わいも感じさせるところにありがちなBaroque Popに終わらない本作の魅力がある。それはPaul McCartneyの系譜を継ぎNeil Innesを思わせる英国的なSongwritingが感じられるところでもある。後にGrimmsやPlainsongに参加するDave Richardsの存在も大きいだろう。
『Upstairs Coming Down』はP.C. Kentが71年にリリースしたアルバム。
アルバム1発目は長ったらしいタイトルの“Little Baby Won't You Please Come Home, Honey-Child Won't You Just Allow Me One More Change, Please”。イントロのピアノから英国の香り濃厚なナンバー。ピアノやベース、Brass、VocalがもうたまらなくBritishなのだ。メロディをはじめ全体的にどことなくPaul McCartneyを思わせる。
続く“Sweet Suzie Brown Boots”もまさしく英国ど真ん中。HarpsichordやChorus、ベース・ライン、Jazzyなギター・ソロ、一筋縄でいかないところも良し。
“Broadened”は渋すぎるAcoutic Guitarが染みるインスト。
“Please Time Please”はマッタリしたBluesyな魅力が楽しめるナンバー。合の手を入れるギターが実にイイ感じ。
“I'm Hanging On”はThe Beatles直系の屈折Brtish Popなナンバー。4拍子から3拍子になるところやChorusがいかにもな感じ。
“We Are The Police”もCollageや効果音などが入り乱れ、英国流のCynicalなHumour炸裂のナンバー。
“Prelude To Brighton Rock”はピアノ演奏のみのインスト。
“One For The Road”は、これまた英国的なオチャラケ男性Chorusが面白い。
Acoustic Guitarと英国的な優美なメロディが絶品の味わいの“Suzy”。
“After Dark”もBritish風味がきいたBaroque Pop。典雅なメロディを歌うVocalとピアノやChousが最高。
“Blue Railway Fields”はBluesyなAcoustic Guitarがイイ味出しまくりのインスト・ナンバー。
アルバム最後を飾るのは優美なStringsに導かれ英国情緒に満ち溢れた歌メロが素晴らしい“Plastic Wedding”。後にJethro Tullに参加するDavid PalmerのOrchestrationが正に大英帝国流儀。
(Hit-C Fiore)