フランスでは70年代に超絶技巧のリズム隊を有するJazz Rock Groupが幾つも誕生した。ドラムスのAndré CeccarelliとベースのTony BonfilsのWorking Progressを筆頭に、ベースのJoël DugrenotとドラムスのJean-My TruongがいたZao、CeccarelliとベースのChristian PadovanによるCCPPやTruongとSylvin MarcによるSurya、他にもMagmaや、そこから派生した数々のバンドはとにかく強力なリズム隊が存在した。本日ご紹介するChute Libreも彼らに負けず劣らず強力なリズム隊を配したJazz Rock Bandである。Weather ReportやStingのバンドなどで知られるMino Cineluがドラムスとして在籍していたことで一部の好きモノたちの間で評判を呼んでいたが、2ndアルバムとなる本作ではCineluに代わってAsgardの『Tradition & Renouveau』で叩いていたUmberto Pagniniがドラムスとして参加している。Cineluもスゴいドラマーだが、この人のドラムスもまた素晴らしいのだ。Chute LibreはMoravagineというバンドを母体にして生まれている。そこでPercussionを叩いていたCineluとFluteやSax、Contrabassを演奏するMulti-InstrumentalistのDenis Barbier、鍵盤奏者のOlivier Huntman、Sax奏者のPierre-Jean Gidonに、ベースのGilles Douieb、ギターのPatrice Cinélu(Minoの兄弟?)、Sax奏者のEric Letourneuxを加えたメンツで77年にデビュー・アルバム『Chute Libre』をリリースしている。実は個人的には本作よりもその1stアルバムの方が気に入っているのだが、ジャケットでこちらを選んでしまった。TromboneでPhilippe Simon、TrumpetでOlivier De La Tailleが参加したHorn隊が充実した本盤も、腕達者のMusicianたちがイヤミなく技巧を発揮したEnsembleの妙が楽しめる好盤であることに変わりない。
『Ali Baba』はChute Libreが78年にリリースした2ndアルバム。
アルバム1発目はタイトル曲“Ali Baba”。揺らめくエレピに浮遊感に満ちたFlute、Minimalなフレーズを弾くベース、ギターのArpeggioによる幻想的でゆったりした出だし。Horn隊が柔らかなEnsembleを奏で、しばらく心地良さに浸っているとLatin Beatにのってギターが唸りを上げる。Percussionと変幻自在に躍動するリズム隊が気持ち良すぎ。
Funkyなギターのカッティングで始まる“Trop Tard”。ベースがうねりまくるキレ味抜群のJazz Funk。Horn隊のスリリングな切れ込みとOlivier Huntmanの流麗に転がるエレピ・ソロが絶品。
静謐な美しさを秘めた“Paysages D'Ur”は、天高く浮遊していくFluteやElegantなCelloをバックに歌うGilles Douiebのベース・ソロが鳥肌モノ。
“Octopus”はキレキレのリズム隊にHorn隊が鋭く切り込むFunky Tune。
“Cello”はタイトル通りCelloが優美に、時にスリリングに、時に心地良く鳴り響き、エレピやベース、ドラムスによる極上のEnsembleにのってFluteやアコギ・ソロが眩く輝く。
“E 330”もうねりまくるベースと切れ味抜群のHornn隊が圧巻。Latin Beatへのリズム・チェンジでのアコギ・ソロとピアノ・ソロもお見事。
Philippe SimonのTromboneソロがご機嫌な“Flipper Nana”はFunkyなShuffleからフォービートに鮮やかに展開してのピアノ・ソロが気持ち良すぎ。
“Canaan Part 1”は、これまた疾走するDouiebとPagninの鉄リズム隊がキレキレ。エンディングのPagninのドラム・ソロも良し。
切れ目なく始まるアルバム最後の曲“Canaan Part 2”。
(Hit-C Fiore)