Oceanheart /Harald Grosskopf | BLACK CHERRY

BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC


 数年前に、1stソロ・アルバムにして傑作『Synthesist』と次作『Oceanheart』がリマスター再発されたドイツの異才Harald GrosskopfWallensteinというバンドのドラマーだった人だ。GrosskopfはAsh Ra Tempelの73年作『Starring Rosi』やAshraの79年作『Correlations』、80年作『Belle Alliance』、Klaus Schuleの『Moondawn』や『Body Love』といった大好きな作品でその名を目にしていた。90年代ではAxel HeilheckerとのProjectであるSunya Beatでの活躍で知られる有能なMusicianである。残念ながら本作はオリジナル・ジャケットでの再発にはならなかったが、中々手に入れることが困難であったレア盤が、このように多くの人々の手が届くようになったことは喜ぶべきであろう。改めて聴きなおしてみると、やっぱり最高である。デビュー作『Synthesist』の自由奔放に動き回るMinimalなSequencerが快感を刺激しまくるExperimentalでAmbientなGerman Eelectro-Musicは最高であった。Drummerであったこともあり、抜群のリズム感覚が聴き手の快感のツボをこれでもかと突き、浮遊感のあるSyhthesizerがGrosskopfが叩き出す気持ち良すぎるドラムスにのって桃源郷へと誘う。あくまでもUpperでMeditational心地良さが最優先されるGrosskopfのサウンドは、同時期のDarkでMysteriousな作品が多かったGerman Electronic Musicの中でも異端と言ってもいいのかもしれない。本作も基本的には前作の流れを汲んだものではあるが、'80sな打ち込みサウンドが中核にあることが前作と大きく異なる。しかし、そのCheapなサウンドですら、逆に今聴くと刺激的に聴こえてくるのは、やはりGrosskopfのセンスが優れているからだろう。ある意味、アルバム・タイトルに代表されるような80年代的なOptimismが全体を支配したサウンドは今だからこそ聴きたい音なのかもしれない。

 『Oceanheart』は86年SkyからリリースされたHarald Grosskopfの2ndソロ・アルバム。
アルバム1曲目“Eve On The Hill”はいきなり心地良すぎるSequencerの洪水に思わず腰が動き出す大好きなナンバー。それにしても完全に打ち込みと共存したGrosskopfのHi HatとSnareが心地良くBeatを刻むドラミングが素晴らしい。単純な四つ打ちドラムではない、このドラミングの妙。同時期のありがちな単なるGerman Electronic Musicに終わらないのはGrosskopfの快感のツボを突きまくるドラミングによるところが大きい。
Tempoを落としたWhile I'm Walking”も '80sな打ち込みサウンドを感じさせつつGrosskopfの卓越したセンスが発揮されている。押し寄せる波のように次から次に現れては消えるSynthesizerは80年代的なChespなサウンドながら、心地良いタイミングとフレージングで刺激する。曲のタイトルのようにWalkingしている時に聴くとドーパミンが出まくりで周りの風景も違って見えてくる。
幻想的なSynthesizerに導かれて始まる“Oceanheart”は誰も知らない宇宙の果てに存在するようなAmbienceSpacyなSyhthesizerが心地良く案内してくれる。就寝前に聴くと最高の1曲。
Coming Outも'80s PopなCheapなサウンドが印象的なナンバー。ここでも Grosskopfのドラミングにご注目。やっぱりHi HatとSnareのCombinationが素晴らしい。そしてお気楽陳腐なSynthesizerのサウンドキラキラと光り輝き出すから不思議である。この高揚感は最高だ。
Christian WasdarisTablaがFeatureされSequencerと絶妙のCombinationをみせる“Pondicherry Dream”。Ragaな雰囲気ではあるが、ここではMeditationalというよりも、ひたすらUpperでせわしないリズムの波状攻撃を浴びながら身体を動かしてしまうDance Musicとして機能している。
アルバム最後を飾るのは10分越えの“Minimal Boogie”。Simpleなピアノのフレーズ無邪気でMinimalに戯れる打ち込みが生み出すBreezyなサウンドにクラクラしてしまう。幾重にも重なっていくピアノと自由自在に遊びまくる打ち込みサウンドが気持ち良すぎ。
(Hit-C Fiore)