伏目がちに左斜め下を見つめている何か物思いにふけっている青白き文学青年。おそらく60~70年代にはこういう長髪で前髪ハラリの耽美派インテリっぽい青少年がそれなりにいたのだろう。フランスのギタリストAlain RenaudのEnnuiな視線のその先には何があるのだろうか?Alain RenaudはHeldonやTriangleといったフランスのProgressiveなバンドのアルバムにギタリストとして参加していることで知られている。74年にリリースされたHeldonのデビュー・アルバム『Electronique Guerilla』にギタリストとして参加しており、それ以来リーダーのRichard Pinhasとも何度か共演しているようだ。Alain Renaudはギター以外にSynthesizerも弾くようだが、この人の演奏のセンスの良さが個人的にツボだ。それなりにギタリストとしても高い技術を持っており、速弾きやカッティングも上手いし、ガンガンに弾き倒しても決して下世話にならない独特の優美なセンスは特筆すべきだ。楽曲に関しても、特に何が優れているというわけはないのだが、実に心地良いツボを突いてくる。本作では殆ど一人で演奏し、多重録音で作り上げた作品として、自分としては結構影響を受けたアルバムである。1曲のみゲスト参加のドラムスのClément Baillyは鍵盤奏者/作曲家/ProducerのFrançois Bréantが結成していたバンドNemoのメンバーであった人。BaillyとRenaudは、
Heldonに参加したベーシストDidier BatardとかつてTriptyqueというTrio編成のバンドを組んでいた。本作に漂う独特の空気感は中々得難いものがある。Renaudは翌年に次作『Out Of Time』をリリースして、78年にはAlain Renaud And Clones名義でFunkyなJazz Rockがカッコイイ『Back And In Again』をリリースしている。ギタリストだけではなくSingerとしても、その後活動したようだ。
『Renaud』はAlain Renaudが75年にリリースしたアルバム。
アルバムはA面すべてを使ったインストの大曲“Back And In”で始まる。全部で3つのPartから成る組曲である。最初のPartとなる“Intro”ではRenaudのテクニカルなギターが思う存分披露されるギターのみの演奏だが、この人は中々センスも良い多重録音でギターを重ねて弾き倒ししても空間を上手く使っており実に心地良い。続いてのPartはClément Baillyのドラムスも加わり、ギター、ベース、ドラムスのSimpleなバンド編成でのBlues Rockな演奏の“Part 1”。Renaudの弾くギターRiffやギター・ソロもイイ感じだが、Funkyなリズム隊が結構カッコイイ“Part 1”。最後のPartとなる“Part 2”ではぶっとい音色のAnalog Syntesizerにのってギター弾きまくり大会。多分、CosmicなSynthesizerもRenaud自身が弾いているのだろう。このSynthesizerの演奏も中々面白い。
LyricalなAcoustic Guitarの爪弾きから始まる“Uneasy Serenity”。Classicalで静謐感漂うアコギのみの演奏はRenaudの心の内面を伝えるかのような繊細な硝子細工を思わせる演奏。欧州らしい抒情を湛えながら独特の空気感を生み出している。ギターの多重録音による心地良いギターのカッティングをバックにしたギター・ソロもイイ感じだ。この透明感と清涼な空気が流れるAtmosphereは素晴らしい。
浮遊感に満ちたエレピの演奏をバックにギターの多重録音が冴える“Voyage Without A Guide”。
最後は自らVocalも担当してBluesyなギターRiffでキメまくる“Pretty Stranger”。これが中々カッコイイFunky Rockになっている。一緒に歌っているのはHeldonのAlain Bellaïche。このChorusも実にイイ感じである。
(Hit-C Fiore)