Tertio/Atoll | BLACK CHERRY

BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

  Atollが来日する。なんと今回はVocalのAndré Balzerに、あの全盛期のギタリストChristian Béyaも一緒になってやって来る。このフランスのバンドは10代の頃に中古レコード屋さんで目にした1stアルバム『Musiciens - Magiciens』のジャケットに魅せられて思わず衝動買いしてしまったのが最初の出会いである。VocalのAndré Balzer、鍵盤奏者Michel Taillet、ギターのLuc Serra、ベースのJean-Luc Thillot、ドラムスのAlain Gozzo、ゲストのSax奏者Laurent Gianezというメンツであった。独特の雰囲気を持ったBalzerのフランス語のVocal夢想的な鍵盤透明感のあるChorusタイトで躍動感に満ちたリズム隊など、当時のフランスのバンドの中でも歌と演奏、楽曲のQualityは群を抜いていたと思われる。続く2ndアルバム『L'Araignée-Mal』では

ギターのSerraがChristian Béyaに交代し、Sax奏者に代わりViolin奏者Richard Aubertが加わり、これまでに比べJazzyなEnsembleも顔を出し、一気に完成度の高い作品となった。そして、これまたおどろおどろしいジャケットが秀逸。本作は、それに続く3作目のアルバムである。Atollは70年代に4枚のアルバムを残して解散してしまったようだが、いずれのアルバムもジャケットが素晴らしい。そんな中で、本作はジャケットが一番地味であるが内容は充実して高い完成度を誇っている。作品としては前作の延長線上で、BalzerのVocaがより前面に出てPopな味わいも増した傑作となっている。残念ながらViolin奏者は去ってしまったが、4人の演奏者Ensembleがより洗練され、聴きごたえのあるアルバムとなっている。中でもギタリストBeyaの才能が光っている。続く79年作 Rock Puzzle』も個人的には結構お気に入りである。

 

 『Tertio』はAtoll77年にリリースした3rdアルバム。

アルバム1曲目“Paris C'est Fini (Part I & II)”はMichel Tailletの弾くSynthesizerとChristian Béyaのギターによる迷宮へご案内的イントロで始まる。André Balzerの迫力満点のEmotionalなVocalと効果音を巧みに使いながらImaginativeな音像が拡がっていく。Jean-Luc ThillotのFunkyなベースやAlain Gozzoの引き締まったドラミングも良い。最後はBeyaの弾き倒しが盛り上げる。

Mysterious哀感漂うSymphonicSynthesizerとBalzerの変幻自在のTheatricalなVocalが印象的な“Les Dieux Même”。抒情的なイントロから激しくVocalがShoutし、MagmaStella VanderLisa Deluxeらの妖艶な女性Scatもイイ感じ。お約束のBeyaの泣きのギター・ソロもグッときますな。

Fanfareのような勢いのあるイントロで始まる“Gae Lowe (Le Duel)”。FalsettoをまじえたVocalも面白い。ハチロク調のRhythmになりPopな味わいもみせる。DynamicでありながらMelodicなのがAtollらしい。

Romanticな“Le Cerf Volant”は囁いたかと思えば激しくShoutをキメるBalzerの表情豊かなVocalが光る。最後はBeyaのギターがむせび泣き

アルバム最後をシメるのは2つのPartから成る組曲“Tunnel”。まず“Tunnel Part I”は変拍子も楽々こなす躍動するリズム隊にのってSpacyなSynthesizer幻想的で煌びやかなギターのArpeggioが宇宙を駈けぬけていくよう。BalzerのVocalも存在感を発揮している。最後の激しRhythm Ensembleがカッコイイ。

Tunnel Part II”はSpacyなSynthesizerとBalzerのMonologueに導かれ異次元空間に連れ出されていくようだ。最後は、これまたお約束のBeyaのギターソロとTailletの鍵盤ソロが盛り上げまくり。

(Hit-C Fiore)