英国Norwich生まれのRoger Bunnは最初期のRoxy Musicへの参加やDavid Bowie(“Life Is a Circus”はBunnの曲)とも関わりを持ち、Charlie Parkerに傾倒していた男。Bassistとして60年代の音楽シーンに Graham BondやZoot MoneyそしてBritish JazzのFieldに輝かしい軌跡を残したAlto Sax奏者Joe Harriottとも仕事をしていたという。South AfricaからUKにやって来たChris McGregorのThe Blue Notesにも参加していたというから驚きだ。60年代の英国はJazzやRockやTradもBluesもFolk、Popsの分野でジャンルを越えて音楽家が集まり素晴らしい作品を残している。Roger Bunnが唯一残したSolo AlbumはJazzやBlues、Rock、Folk、Soul、Psychedelic Musicが混然一体となった60年代後半の英国音楽の最も魅力的な部分を反映した作品となった。この混沌としてUndergroundな香り漂う作品が歴史に埋もれてしまったのは残念であるが、CD化された時の驚きと喜びは例えようがないものであった。ジャケットも個人的にお気に入りのあのレア盤をついに聴けるという喜び。The Beatlesが67年の暮れにリリースした『Magical Mystery Tour』が残した英国特有のPsychedelicでDreamyな混沌とした世界。本作にはそれが宿り、胡散臭さを増しながら何とも言えない魅力を放っているのだ。
それは70年に生み出された唯一無比のRoger Bunnの世界に他ならない。
『Piece Of Mind』はRoger Bunnが70年にリリースしたソロ・アルバム。
アルバム“1曲目はRoad To The Sun”。イントロの神秘的なFluteから始まりベースがMinimalなフレーズを弾き出すところがカッコ良すぎ。呟くようなVocalにピアノ、アコギ、Stringsに疾走するJazzyなリズム隊はまるで夢の中に迷い込んでしまったかのような音迷宮を生み出している。
弾き語りにJazzyなピアノが加わる“Jac Mool”。
高らかに鳴らされるHorn隊に気怠いVocalがイイ感じの“Fantasy In Fiction”。後半のあっという間に終わってしまうアコギ・ソロが超絶カッコイイ。
“Crystal Tunnel”も疾走感のあるRhythmにのったHorn隊やギター・カッティングに呟くVocalが何とも'60sの英国らしいジャンルを飛び越えた音楽性で楽しませてくれる。短いSaxソロも素晴らしい。
弾き語り“3 White Horses”はバックに流れる波の音のSEもイイ感じ、
Fiddleが雰囲気を出しているBluesyな弾き語り“Cattatonia”。
“Suffering Wheel”もOrchestrationが独特の効果を上げているBluesyなノリノリのRock And Roll風のナンバー。
“Gido The Magician”はFolkyなアコギの弾き語りに、これまたHorn隊とOrchestrationが絡ん60年代の英国らしい摩訶不思議な音世界を展開している。
“Powis Square Child”も弾き語りであるが、これまたThe Kinksあたりに通ずる英国らしい作品。
“Old Maid Prudence”はFluteで始まり、PsychedelicなサウンドにのせてRunnの語り口は時にLyrical、時にJazzyにと様々な表情を魅せる。
“Humble Chortle”はアコギをジャンジャカ鳴らして性急に突き進むリズム隊にのって早口でまくしたてるBunnのVcalが面白い。
“Jasaons Ennui”はピアノとOrchestrationがBunnの哀感漂うVocalとDreamyな空間を作り上げている。
最後を飾る“110° East + 107° North”もBunnのVocalに絡むピアノやStrings、Fluteの調べが陰影に富んだ英国の香り漂う作品。
(Hit-C Fiore)