Saying Something/The Bill Hardman Quintet | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC


 ジャケットは大事である。Art BlakeyThe Jazz Messengersのメンバーとして活躍したTrumpet奏者Bill HardmanがHrad Bop全盛期ともいえる50年代に残した唯一のリーダー作となる本盤は鯔背なHard Bopを聴かせてくれる大好きな作品である。しかし、この安っぽいSalvador Dalí好きの学生が書いた風のジャケットで、せっかくの男前Hard Bopが台無しである。50年代のみならず60年代や70年代も参加したThe Jazz Messengersの印象が強いHardmanは50年代に、Charles Mingusの作品やHank Mobley、盟友Jackie McLeanの作品にも参加しているのだが、The Jazz Messengers在籍時にこれといった傑作を残せていないことやリーダー作が極端に少ないせいもあって地味な印象が強い。確かに派手なテクニックもないし、High Notes連発の華やかさや目の覚めるような流麗さやキレ、力強さはないし、チョイと頼りない部分もあるかもしれないが、中音域を効果的に使った朴訥なプレイは、燻し銀の魅力があるのだ。短期間ではあるがHorace Silver Quintetにも参加していたし、この人のTrumpetには独特の温もりが感じられる。本盤ではFrontにはAlto SaxSonny Redを迎えてRonnie Mathewsのピアノ、Doug Watkinsのベース、Jimmy Cobbのドラムスが実に堅実な演奏で盛り立てる。最初と最後の曲のみBob Cunninghamがベースを弾いている。面白いもので、ぎこちなさや、ある種のつたなさもJazzの魅力となってしまうのだ。

 『Saying Something』はThe Bill Hardman Quintet61年Savoyからリリースしたアルバム。
アルバムのOpener“Capers”はHardmanのTrumpetがSwingyなリズム隊にのって絶好調のソロを披露する男前Hard Bop
Ronnie Mathewsの流麗なピアノで始まるBallad“Angel Eyes”は哀愁たっぷりにHardmanのTrumpetがThemeを吹けば、Sonny RedのAltoソロ、Mathewsのピアノ・ソロも程よくBluesyに、そして最後は再びHardmanが独特のStaccato気味無骨で味のあるプレイでシメる。
ベースとピアノの低音部を使ったUnisonのRiffにのったThemeがカッコイイ指パッチンの“Jo B”。Hardman、Sonny Red、Mathews、Watkins、Cobbのソロと続くが、いつになくHardmanが弾けたプレイなのが面白い。Hardmanのオリジナル曲。
Hardman作の“Buckeye Blues”はSonny Red歌いまくり、Hardmanもタメをきかせながら、お得意の中域を生かしたRelaxしたフレージングで魅了する。BluesyなMathews、Doug Watkinsのベース・ソロもイイ感じ。
Doug Watkinsのベースに導かれてJazz Waltz風に始まる “Assunta”。途中からTempoを上げたフォービートに展開するのが面白い。Hardmanがふっきれたようなソロを披露するところも良い。
最後を飾る“It Ain't Happened Yet”は56年作『Hard Bop』に収録されていた“Cranky Spanky”の改作。激カッコイイThemeに続きHardmanのキレキレのTrumpetソロがカッコイイ。
(Hit-C Fiore)