Alceu ValençanoはBrazil北東部の伝統音楽に英米RockのDynamismを融合させ独自の世界を創り出すのに成功した一人だ。それにしても、このジャケットはスゴイ。Vocalの表現力が半端ない役者なのである、Alceu Valençaという音楽家は。Alceuのアルバムを集めるようになって、Alceuが演じるかのごとき各楽曲の主人公の面白さや、世界観にドンドン惹きこまれていった。風貌も長髪に無精ひげのHippieというかRock魂漲る感じではあるが、Luiz GonzagaやJackson Do Pandeiroといった北東部の音楽を全土に広めていった先達の功績を受け継ぎ、自らの身体の中でそれらの伝統音楽をしっかり消化しているのだ。ForróやCocoのRhythmを身体化し、伝統を継承した上で暴れまくるAlceuは素晴らしい。それは傾奇者の格好をしてBaiãoをBrazil全土に流行させたGonzagaに通ずるものだ。自由奔放で野性味あふれる、正にエネルギーの塊といった感じのAlceuのVocalは確かに灰汁が強いが、一度ハマると、その魅力は癖になってしまうものがあるのだ。80年代に入ってからのAlceuも、その個性を埋没させることなく多くの人々に耳に届く音楽を創り続けた。MaracatuやFrevoなどNordesteから生まれ育ってきた音楽の持つ生命感に満ちたRhythm、AlceuはそれらにRockなエレキやFunkyなベースを組み合わせた。確かに強引で荒削りな部分は多々あるが、それすらもRockな魅力になっている。本作でも北東部の音楽をベースにRocl魂を爆発させているAlceuを楽しむことができる。80年代の第三世界の音楽の面白さは英米を凌ぐものがあると思っている自分だが、本作を聴くたびに今でもワクワクさせられる。
『Cinco Sentidos』はAlceu Valençaが81年にリリースしたアルバム。
アルバム1曲目“Quando Olho Para o Mar”は揺らめくエレピとSpacyなSynthesizer、Flute、10ccのGizmoみたいなギターの音色に魅了される。そしてAlceuのVocalが加わると、もう唯一無比の世界に惹きこまれていく。
未知の世界への案内人のように怪しい魅力を発散するAlceuのVocalが強烈な“Cabelo No Pente”。呪術的なChorus、Fluteや低音で蠢くFretless Bassもイイ味を出している。
ぶっとくFunkyなベースがうねる“Fé na Perua”は女性Chorusと一体なってValençaの表現力に富んだVocalが暴れまくる。Sanfona(Accordion)が、これまたイイ味を出している。
北東部の伝統的なRhythmにのってFluteとロックなエレキのフレーズの組み合わせが不思議な世界を作り出す“Guerreiro”。
哀感に満ちた“Arreio De Prata”。
チョイPsyche入ったStringsとSanfonaとFluteが、やはり唯一無比の世界を作り出す“Cinco Sentidos”。
Brazil北東部の生命感に満ちたRhythmにAlceuの力強いVocalがのって大地を思いっきり駈けぬけていくような爽快感が良い“Tirana”。
まどろむようなギターのArppegioとエレピをバックにした“Porto Da Saudade”はAlceuの囁くようなVocalが幻想的な世界を演出する。
最後を飾る“Seixo Miúdo”も摩訶不思議なAlceuワールド全開のナンバー。SanfonaとエレキやStringsが躍動するRhythmにのって天空を駆け巡り、Alceuは自由奔放に聴き手を引き摺りまわしていくのだ。
(Hit-C Fiore)