Live/Aera | BLACK CHERRY

BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC


 80年代の音楽を掘り漁っていた時期に、当時の中南米や北欧や東欧や南欧の音楽は同時期の英米よりも自分の好みに合うし、中々面白いものが多いことに気付いた。音楽、特にRockの世界においては、80年代は従来の価値観や方法論がこれまでになく大きく覆された時代のように思える。そういったTechnologyや流行の最先端をいくのは英米の音楽なのかもしれないし、そこから生まれた異形の音楽は確かに興味深いモノがある。しかし、大半のものは、当時は多くの人々を驚かせた新しい音楽であったかもしれないが、それ故に今現在の耳で聴くと60~70年代の音楽以上に古くさい感じがしてしまうものが多いのだ。Orchestra HitGated Reverbのドッタンバッタンのドラム・サウンド打ち込みやDigital Synthesizerを使用した音楽、そういったものにお構いなしで英米以外の国では自分たちの理想とする音楽を探求している音楽家が紡ぎ出していったものがある。そんな音楽は今聴いても古びない魅力的なものが多いような気がする。ドイツやフランスにもそういった連中は沢山いた。特にドイツのEmbryo周辺の音楽家たちの活動は80年代以降も非常に興味深い。世界各国を旅しながら現地のMussicianとSessionしてきたEmbryoには優れたMusicianが数多く在籍していたが、ギタリストのRoman Bunkaもその一人だ。Bunkaが参加したAeraのLive盤が本作である。AeraもEmbryo同様にメンバーの出入りが激しいバンドであったが、Bunkaが参加したMissus Beastlyのメンバーも加わった本作はAggressiveでExperimentalな熱演となった。それは商業主義に魂を奪われてしまう80年代のFusionとは一線を画す真の意味でのCrossover、Fusionへの道標となるべき音楽であった。この音楽は80年にリリースされるBunkaの名作『Dein Kopf Ist Ein Schlafendes Auto』へ引き継がれていく。

 『Live』はAera80年にリリースした79年11月の演奏を収録したLiveアルバム。Aeraというバンドは76年にリリースされた2ndアルバムの『Hand Und Fuß』まではギタリストのMuck Grohが主導権を握っていたが、彼の脱退以降はSax奏者のKlaus Kreuzederがリーダー役を果たしていく。ドラムスのLutz OldemeierとベースのLocko RichterはMissus Beastly出身。この2人とPercussion奏者のHelmut Meier-Limbergは前作の79年作『Türkis』からAeraに参加している(Lockoは1曲のみだが)。
アルバム1発目のRoman Bunka作の“Scream Your Horizon”。いきなりLed ZeppelinなHardなギターRiffが飛び出す。後にEmbyoに参加するFreddy SetzのOrganがイイ味を出している。
Freddy Setz作のAbstractで幻想的な“Yellow Moon”。Freeで実験音楽のような前半から神秘的な香り漂う歌モノに展開していくところが最高。
Experimentalな音塊の中をKlaus KreuzederのSaxが駈けぬけていく“Stoned Out”。こちらもFreddy Setz作。
FunkyなRiffとリズム隊が最高な“What I Can Do, You Can Do Too”。重心の低いベースにHandclapsが印象的。
切れ味鋭いギターやドラムスをバックにKlaus KreuzederのSaxが浮遊する“Sulzheim Swinging”。80年代初頭を思わせる音作りも案外新鮮である。後半はOrganが存在感を放ち、HeavyかつAggressiveに盛り上がっていく。BunkaのギターやLocko Richterのベースの迫力に圧倒される。
Klaus Kreuzeder作の“Harm-O-Nights”はFreddy SetzOrganが印象的なバッキングをする中、Klaus Kreuzederが縦横無尽にBlowしまくり。
最後をシメるのはBunka作の“Scooter Future”。Ethnicで幻想的な曲調に突如入ってくるBunkaのVocalが何ともいえない不思議な空間を作り出している。
(Hit-C Fiore)