
都会に住んでいる人々にとって、地方から生まれてきた、その素朴で生命感に満ちた音楽というのは新鮮で魅力的に感じられたであろう。"The King of Baião"と呼ばれたCangaçeiro帽をかぶり胸甲や胴衣を身に着けた男Luiz Gonzaga。ご丁寧に弾薬帯まで纏ってサンダルを履き山賊をイメージさせる傾奇者を演じた男は、北東部に古くから伝わってきた音楽の伝道師となった。Brasil北東部から生まれた音楽は、多様な民族や文化、宗教、芸術、風習が入り混じりながら独自の発展を遂げていった地からしか生まれ得ない芳醇な味わいも持った音楽。Brasil音楽の素晴らしいところはAfricaに起源を辿るものと欧州で生まれたもの、そしてBrasil先住民が生み出したものが複雑にMixされながら独創的な音楽が次々に誕生していくところだ。それは北東部に限ったことではなくMinas GeraisやRio Grande do Sul、Goiasからも素晴らしい音楽が生まれていることからもわかる。Pernambuco州のRecifeに生まれたLuiz Gonzagaは幼少時にSanfona(Accordion)を学ぶと、最初こそ流行音楽を演奏していたがForróやCocoといったNordesteに伝わる音楽を演奏するようになっていく。SanfonaにZabumbaとTriangleというForróの基本形ともいうべき編成で北東部の音楽を都会でも流行らせたGonzaga。一躍人気者となり、また人気が衰えると、Caetano VelosoやGilberto GilといったTropicaliaの先鋭たちが表舞台に引き上げたのだった。
『São João Na Roça』はLuiz Gonzagaが58年にリリースした10インチアルバム。アルバム・タイトル通り6月に行われるSão João祭(Festa Junina)をThemeにしたアルバム。
アルバム1発目から思わず腰を動かす“São João Na Roça”。幾分甘いGonzagaのVocalに陽気で生き生きとした男女のかけ合いが楽しい。
“Olha Pro Céu”はGonzagaがSão João祭の夜のRomanticな歌詞を甘く歌い上げる。
Fagnerとの共演盤『Gonzagão & Fagner 2』で個人的には大好きになった“Noites Brasileiras”。
“São João Antigo”も男女が楽し気に歌い踊るさまが目に浮かぶ楽しいForró。
50年に発表されたGonzagaの代表曲のひとつ“A Dança Da Moda”。哀感漂うメロディーであるが、タイトルにあるようにDanceしたくなる生き生きとしたリズムが楽しい。
ひたすら陽気な演奏やGonzagaの歌いっぷりが最高の“Lenda De São João”。Chorusと管楽器やPercussionが一体となって生み出される生命感に満ちた音楽に夢中になってしまうのだ。
SanfonaとFluteによるイントロがめちゃくちゃカッコイイ“Mané E Zabé”。力強い女性Vocalもまじえながら躍動するリズムにのってGonzagaのSanfonaとVocalがイイ感じ。
最後をシメるのは“São João Do Carneirinho”。陽気に歌い踊る人々の顔が思い浮かぶ祝祭感満点のナンバーでアルバムは幕を閉じる。
(Hit-C Fiore)