Los Delirios Del Mariscal/Crucis | BLACK CHERRY

BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC


 Argentinaのサッカーは、オサレにパスを回してなんていうのとは違って単調と批判されようが、基本人並み外れた個人技を前面に出して、中盤からでもドリブルで仕掛けて攻めに攻めまくるところが潔くて好きだ。南米らしさと言われる高い技能に恵まれた個人が結集したテクニカル集団が、これでもかとばかりにスーパー・プレイで魅了する頑固なまでの俺様流儀。音楽の世界でも、そんな猪突猛進タイプのテクニシャンが集まったグループがある。Buenos Airesで結成されたCrucisは4人組のグループで、ベーシストGustavo Montesano、鍵盤奏者のAníbal Kerpel、ドラムスのGonzalo Farrugia、ギタリストのPino Marrone、いずれも剛の者である。とにかく南米はサッカーに限らず音楽でも超絶技巧の高い身体能力を持った才能の宝庫である。Argentinaの音楽に関していえば、実はそういった才能あふれた音楽家は攻める一方ではなく、引きの美学にも優れている場合が多い。だからひたすら手数で勝負して音の隙間を埋め尽くしていくタイプは実は意外と少数派なのである。個人的には空間を生かしたり数少ない音数で魅惑的な音楽を創造してく音楽に心惹かれるのであるが、たまにはコッテリした味を試してみようかな?などと思ったりもする。攻める一方のメンバーの中でも時折比較的、引きの美学を心得た醒めた炎的なプレイをしていた鍵盤奏者のAníbal Kerpelは近年、Gustavo Santaolallaの片腕として映画音楽の世界でも活躍し、Santaolallaの手がけた『Motorcycle Diaries』や『North Country』、『Brokeback Mountain』、『Cafe De Los Maestros(アルゼンチンタンゴ 伝説のマエストロたち)』に参加している出世頭。Uruguay出身のドラムスのGonzalo Farrugiaは同国のPisigloというグループに参加していたテクニシャン。

 『Los Delirios Del Mariscal』はCrucis77年にリリースした2ndアルバム。
アルバムのOpeningは唯一のVocal入りのナンバーNo Me Separen De Mi”。鍵盤はSpacyに宙を舞うSynthesizer叩きまくるドラムスに歌うベースが南米らしいテクニカルな盛り上げりをみせる。しかし、どこか親しみやすいメロディー・ラインが微笑ましい。
これまたArp Solinaが奏でるStrings Synthesizer抒情的な泣きのギターが作り出す音宇宙がいかにもな“Los Delirios Del Mariscal”。このまま泣き続けるかと思いきや、軽快なエレピのRiffでいきなりTempoを上げて突っ走る。鍵盤奏者Anibal Kerpelの作品。
リズムがキメを多用して激しく煽りまくりCoolなエレピと熱く燃え上がるギターの対比がカッコイイ“Pollo Frito”ギタリストPino Marroneの作品。
Hammondに相変わらず唸りを上げるギターで始まる“Abismo Terrenal”。ワウをかけたカッティング縦横無尽に駆け巡るMoog、笑ってしまうほど暑苦しいテクニックの応酬は逆に爽快感すら感じさせる。シェンカーさんやディメオラさんのような鬼の弾き倒しと抒情的な泣きでギターが引きという言葉知らずのおなか一杯盛り上げまくり、ついには負けてたまるかとベース・ソロドラム・ソロも登場。このArgentina魂大爆発でゴール前攻めて攻めて攻めまくりの過剰さが最高。
(Hit-C Fiore)