
George Dukeという人は自分にとって、ジャンルなどお構いなしに自分の思いつくまま、自由気ままに音楽を創って演奏する楽しみを教えてくれた人であった。そして、彼の関係した作品はZappaからCannonball Adderley、Jean-Luc Ponty、Flora Purim、Seawindと、さまざまなジャンルに及び、いつの間にか、それらの作品をDukeのリーダー作同様に夢中で聴き漁っていた。Jazz、Funk、Rock、Brazil音楽をごった煮して、彼のフィルターを通して出てきた音楽は実に魅力的で彼らしさに満ちているものであった。それはつまり、George Dukeは自分がかなりの影響を受けた音楽家であるということである。特にMPS時代にDukeが残した作品は自分にとって、さまざまなジャンルの壁を突き破って変幻自在、自由奔放に音楽を楽しむことの素晴らしさを強烈に印象づけてくれたのであった。確かにDuke以外にもそういったVersatileな音楽家はいるが、超絶技巧を駆使しながらZappaのように、おバカでお茶目なところも忘れない何となく憎めないところが好きなのだ。本盤にもZappa時代の盟友が参加しているのがうれしい。加えてドラムスのLeon 'Ndugu' Chancler、ベースにByron MillerというFunkyなリズム隊を軸にGeorge Dukeが暴れ放題、やりたい放題で、何でもありのDukeの良さが出ているアルバムだ。ArpやMoogにエレピにアコピをを絶妙のバランスで弾きこなし、Funkyで歌心あるフレーズを連発している。お得意のFalsettoも爽やかなのにセクシーさんな相反する魅力を持っているのが面白い。多彩なゲスト陣もDukeの音楽性の幅広さを反映しているが、後の作品に比較するとMPS時代はJazz Rock色がまだ強いところが気に入っている。
そんなGeorge Dukeも先月とうとう人生の幕を閉じてしまった。彼の残してくれた作品は、Dukeの風貌同様どこかにユーモラスな部分を残していたが、自分のツボはそこであったから尚更Dukeの笑顔しか今は浮かばない。
今さらだけど心よりご冥福をお祈り申し上げます。
『I Love the Blues, She Heard My Cry』はGeorge Dukeが75年にMPSからリリースした作品。
アルバム1発目はZappバンドのTom Fowlerが参加しLee Ritenourがギターをを弾く“Chariot”。キレの良いアコピにFunkyなカッティング・ギターがカッコイイ。
AirtoとFlora Purimが参加した“Look Into Her Eyes”はFunkyなShufleナンバーかと思いきや、途中からスリリングなJazz Rock的展開に。
Ndugu作の“Sister Serene”はArp Strings EnsembleがSpacyな空間を作るとエレピが絶妙のソロで、気持ち良すぎのインスト曲。
Emil RichardsのMarimbaとJohn WittenbergのViolinのUnisonがProgressiveに展開する“That's What She Said”はDaryl Stuermerのギターも思いっきり弾き倒しのカッコイイJazz Rock。
Emil Richards作の “Mashavu”は短いけれどMinimalで幻想的なナンバー。
“Rokkinrowl”は何とロッケンなRiffをRitenourが弾き、Dukeの野卑なVocalが面白いナンバー。
“Prepare Yourself”はSpacyなイントロからFunkyに展開する。うねりまくるByron Millerのベースが良い。DukeのエレピとMoogのコンビネーションが抜群。
現代音楽風のピアノによる思わせぶりなイントロから始まる“Giantchild Within Us - Ego”。Zappa関係からRuth UnderwoodがMarimbaで、Bruce FowlerがTromboneで参加し、超絶Jazz Rockに展開していくところは失禁モノ。キレキレのNduguのドラミングにDukeのソロもカッコイイ。Rhythm展開や変幻自在のEnsembleが実にZappさんなナンバー。
George Dukeといえば、このSweetなFalsetto Vocal!ということで名曲中の名曲“Someday”。一人多重ChorusにブリブリうねるSynthe Bassが最高。気持ち良すぎ。
ラスト・ナンバーはJohnny "Guitar" WatsonのLazyなVocalとギターをFeatureしたタイトル・ナンバー“I Love The Blues, She Heard My Cry”。最後に、みんなでワイワイやってる話し声をバックにこういうド渋なBluesでシメるところがニクイ、というか、わかっている。
(Hit-C Fiore)