
毎日、鬱陶しい雨が続くと思わず口ずさんでしまう。「It's A Rainy Day, Sunshine Girl♪」本盤は1曲目から最高だ。フロア・タム連打に続き、ただひたすら連呼する。「雨が降ってるんだな♪お天気娘さん♪」「お天気お嬢さん、雨なんだな♪」これだけ。なんとも素晴らしい。繰り返しの美学、というか、意味不明、能天気というかヤル気のなさっぷりが素晴らしい。Faustのアルバムで一番好きなのは、やっぱり本盤なのである。Faustといえば、71年のデビュー・アルバム以来、映像のCut-In、Cut-Ooutを思わせる、サウンドのCut-And-Paste、Samplingといった手法を取り入れたり不協和音、電子音、Noiseを無作為に撒き散らすExperimentalな手法で人々を驚かせてきた。彼らの本質にあるのは、人を食ったようなHumourや予想を裏切るへそ曲がりの感覚であろう。それは、予定調和やありふれたものに対する徹底的な拒絶でもある。PunkやHip HopやIndustrial Musicを遥かに先取りした彼らの音楽スタイルは、過激ではあるが、人を冷徹に突き放したものではない諧謔精神が感じられる。ありふれたRockから離れるために適当に、ルーズに、場当たり主義的に、やらかそうとしているのだが、そこにはある種生真面目なドイツ人的な性分も見え隠れしてしまうのも微笑ましいのだ。元々は音楽Journalistで映画評論家であったUwe Nettlebeckが、腕利きのEngineerであるKurt Graupnerと組んで、FaustのメンバーとWummeにある廃校をStudioに改造して共同生活を送りながら音楽を作っていったのが始まりである。Cut-Up、Collageといった手法ばかりが取り沙汰されれ、その実験的、先鋭的なな部分ばかりが一人歩きしがちだが、全9曲の楽曲で構成された本盤は意外に聴き易く、彼らのHumourが感じられる作品としてお気に入りである。
『So Far』はFaustが72年にPorydorに録音した2ndアルバム。Slapp Happyつながりで彼らに興味を持った自分にとって、Faustとといえば本盤のExperimental Popな佇まいなのである。
1曲目“It's a Rainy Day, Sunshine Girl”。このなげやり感、どうしようもない適当さが最高。
一転して厳かなOrganが鳴り、格調高いClassicalなムードで始まる“On The Way To Abamae”。中世音楽風ギターが奏でられ、1曲目とまったく関連性のない、わけのわからなさが常識人を混沌へと導いていく。哀しげな旋律、そして最後まで1曲目とは対照的な高貴な味わいで終わってしまうのが笑える。
またまたSymphonicな始まりが、これから起きるどんでん返しを予想させて、思わず笑いをこらえそうになる“No Harm”。ヘタウマなArpeggioが始まると、おやっと思わせる。このまま最後まで行ってしまうのか?と思った矢先に案の定、途中からドラムスが入ってめちゃくちゃカッコイイ展開に。Vocalは例によって只ひたすら繰り返すのみでPunkなShoutとギターが素晴らしい。「Daddy! Take the Banana! Tomorrow is Sunday♪」と、繰り返されるのを聴いて、ジャケットを見直し、彼らとThe Velvet Undergroundとの関係性を知ることとなる。それにしても、「父ちゃん、バナナ取ってや♪明日は日曜日だ♪」って、これは素晴らしすぎる。
タイトル曲“So Far”は踊れるBeatにMinimalなギターとTrumpet、バックのSynthesizerが最高。
Noiseと不協和音が1stアルバムを思わせる“Mamie Is Blue”。
一転して日曜夕方の家族向けアニメ音楽風のイントロから始まり、メンバーと子供たちとのChorus共演が微笑ましい“I've Got My Car and My TV”。SaxソロのバックはせっかちなJazz Rock風。
現代音楽風に始まり、あっという間に終わる“Picnic on a Frozen River”。
“Me Lack Space...”は、これまた1stのようなCollageで、何だか不思議な気分になったと思ったら、またすぐ終わる。
最後の曲“...In the Spirit”は、おいおいJazzかよ!何ともお気楽Ragtimeな終わり方も意表を突きまくりで彼ららしい。
(Hit-C Fiore)