Andanca/Beth Carvalho | BLACK CHERRY

BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC


 その歌声も楽曲も、演奏もアレンジも最高な音盤を手にした時、それがまさかBeth Carvalhoのデビュー・アルバムであるとは自分は知らなかったのだ。Imperatriz Do Samba(Sambaの女王)といえば、Carmen Miranda、そしてBeth Carvalhoである。そのBethの知的で可憐な横顔をとらえたジャケットが素晴らしい。白人富裕層の家で育ったというBeth Carvalhoは、音楽好きの家族に囲まれて何不自由なく育ったお嬢さま。バレエを習ったり音楽学校に通いながら10代の頃はBossa Novaを歌っていた。やがて大学に進学するが、Betaは音楽活動を続けて65年にシングル・デビューする。そこで編曲を手がけていたDeodatoと、ギタリスト/CompserのDurval Ferreiraによる双頭ユニットであるOs Gatos(最高!)の66年リリースの2ndアルバム『Aquele Som Dos Gatos』にChorusで参加しているのも見逃せない。さらに、BethはAntonio AdolfoConjunto 3DのVocalに抜擢されて67年作の『Muito Na Onda』でその初々しくもCuteな歌声を披露している。そして、いよいよEMI Odeonとソロ専属契約を結び、本盤をリリースするのである。彼女は、その後Sambaに傾倒し、多くのSambistaの楽曲を積極的に取り上げ、人材も発掘して光りを当てることによって黒人のSambaを世界中に広めた功労者として尊敬を集めている。以前ご紹介したNelson CavaquinhoなどもBethが師と崇めて表舞台に引っ張り出して後押ししている。そんなSamba界の象徴のようなBethがBossa Novaを歌ったデビュー作。これまた何とも素晴らしい出来なのだ。

 『Andanca』はBeth CarvalhoがOdeonからリリースした1stソロ・アルバム。半数近い曲でバックを務めるのはSom Tresの演奏も良い。Sambalanco Trioの鍵盤奏者Cesar Camargo MarianoJongo TrioのドラムスToninhoとベースのSabaと結成した本当に演奏が上手い3人組。また、Golden Boysも参加して彩りを添えている。
アルバムのオープニングはBaden Powell作の名曲“Um Amor Em Cada Coração”。Tromboneのイイ感じのイントロに続いて、Bethaの低音のVocalが何とも色っぽい
Paulinho Tapajos作の“Maria Aninha”はSom Tres歯切れ良い演奏で盛り上げる。
Fechei A Porta”でもSom Tresの演奏が素晴らしい。飾らないBethの歌いっぷりも最高。アルバムで一番お気に入りのナンバー。
しっとりと歌い上げるBalladO Pôrto”。
Betaの落ち着いた歌声が沁みる“Carnival”。
タイトル曲の“Andanca”はDanilo CaymmiPaulinho TapajosEdmundo Soutoの共作で、爽やかで憂いが仄かに漂う名曲。
Golden Boysとの共演となる“Rumo Sul”はPaulinho TapajosEdmundo Soutoのコンビによる作品。Chord進行が面白い。
Milton Nascimento作の“Sentinela”。
Lupicinio Rodrigues作の“Nunca”も堂々とした歌いっぷり。とてもソロ・デビュー作とは思えない。
Baden Powell作の“Samba Do Perdão”。憂いを秘めたBethのVocalもいいもんですな。
Marcos Valle作の泣きの名曲Maria Da Favela”。こういう曲のBethのVocalも堪らないものがありますな。Golden Boysとの共演。
最後をシメるのは、やはりSom Tresの粋な演奏にのってBethaが何とも切ない歌声で魅了する“Estrela Do Mar”。
(Hit-C Fiore)