Soft Heap/Soft Heap | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

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 Ten Years AfterのギタリストAlvin Leeも逝ってしまった。単なる速弾きギタリストとしてだけではなく好きなMusicianであった。音楽関係だけではなく、このところ映画監督や小説家や俳優さんや、その他の有名、無名の方々など、子供の頃から自分が憧れたり馴染んでいたりしてきた人たちが次から次に鬼籍に入っていく。この1、2年は毎月何回もそういった訃報が知らされ、かつての思い出の日々にタイム・スリップする自分がいる。自分もそれなりの歳になったということだろうけれど。それにしてもKevin AyersにしてもAlvin Leeの場合も、まったく予期していなかったから余計に驚いた。この2人は思い入れもあるので、心の整理ができたら、その大好きな作品について取り上げたいと思っている。あらためて故人のご冥福をお祈り致します。
 さて、本日取り上げるSoft Heap。ご存知の通り、もう4人のメンバーは誰もこの世に残っていない。ベースのHugh Hopper、マルチに管楽器を操るElton Dean、鍵盤奏者のAlan GowenにドラムスのPip Pyle。HopperとDeanはSoft Machineのメンバーで、GowenはGilgameshNational Health出身。PyleもGongHatfield and the NorthNational Healthで叩いてきたツワモノ。Heapという名は4人の頭文字からとられているのはよく知られている。ドラムスがDave Sheenに変わるとSoft Headである。正直、このメンツからすれば本盤の出来は地味で、彼らの関わってきた素晴らしい作品の数々に比較すると凡庸に感じられてしまうかもしれない。確かにReturn To Foreverを思わせるエレピや、いつもより派手さを抑えたかのようなPyleのドラミングには、かつてCanterburyに集結した才能から放たれた独創性を感じることはできない。しかし、これがまた何ともいえないLate 70'sな香りとなっているし、どうしても残ってしまう英国人らしい湿り気、ありきたりのフュージョンでは終わらないCanterburyの残り香のようなものがグッとくる。本盤が発表された時代背景も合わせて考えると、このQuartetが残してくれた作品が愛しくてたまらなくなるのである。

 『Soft Heap』は79年Charlys RecordsからリリースされたSoft Heapのアルバム。
アルバムのオープニングはHopper作の“Circle Line”。このベースのHarmonicsから始まるイントロは最高。DeanのSax、そしてGowenのSinthesizerが、もうどうしようもなく英国の陰りを色濃く滲ませる。
ベース、ドラム、SaxによるFreeなイントロから始まる“A.W.O.L.”。Hopperお得意の歪ませたベースも飛び出し、GowenのSynthesizerも怪しい音で挑発する。メンバー4人の共作。
Gowen作の“Petit 3's”はSaxが奏でる悩ましくもSentimentalなメロディーエレピの響きが一歩間違うとフュージョンに陥りそうな印象を与える。だが、コード進行と選び抜かれた音使いが凡百のフュージョンとは決定的に異なるComposeの妙を味わえるGowenらしい作品。
Dean作の“Terra Nova”は、DeanとHopperのUnisonによる長いイントロの後、ドラムスのエレピとベースのUnisonによりRiffが奏でられSaxがBlowしまくるJazz Rockへと展開する。Gowenのエレピが、RTFを思わせる。DeanとHopperはSoft Machine中期を思わせるが、エレピの響きや途中でFunkyな味さえも感じさせるリズム隊が、この時代でしか出しえない雰囲気を醸し出している。
Radu MelfattiTromboneをFeatureしたDean作の “Fara”。Soft Machineに在籍していたMarc CharigTrumpetで参加している。MelfattiはCharigもメンバーであったElton Dean's Ninesenseのアルバム『Happy Dayz』にも参加している名手。かつての面影もすっかりなくなり陰りゆく大英帝国。Tromboneが奏でるどこか寂しげなメロディーは、エレピとともにやるせない雰囲気を醸し出す。この曲を聴くと、いつも感傷的な気分にさせられてしまう。
最後はGowen作の“Short Hand”。ドラムがRollをまじえた変拍子のSaxとエレピとのUnisonによるイントロの後は、DeanとPyleの2人だけのAggressiveな演奏が続く。DeanがFreakyにBlowし、Pyleは、それまでの鬱憤を晴らすかのように暴れまわるが、完全燃焼とまでには至らず、また変拍子のUnisonに戻る。良くも悪くも、このアルバムを象徴するかのような中庸の味わい。これはこれで得がたい魅力がある。
(Hit-C Fiore)