
Amon Duulや、そこから繋がるEmbyo関連の人脈を追っていくと、それこそジャンル分けなどというのが全く意味を持たなくなってくる。それほどジャンルや人種、国境、世代を超越してさまざまなMusician達がかかわり合いながら自由気ままに表現活動を続けてきている。その代表的存在が現在も活動を続けるEmbryoである。Trilok GurtuやYuri Parfenovとの関わりも勿論、数年前にMadlibがEmbyoとレコーディングしたからといって別に驚かない。それほど彼らの音楽性は何モノも飲み込んでしまう自由と許容力に満ちている。黒いとか白いとか肌の色で単純に二元化してしまう音など全く意味のない世界が、既に彼らのような音楽家の間では形成されてきた。それはこれまでに、ここでご紹介してきた元々異種交配が盛んであった中南米や欧州の音楽家たちのみならず、米国やAsia、Africaの音楽家でも確実に拡がってきている。とはえいえ彼らは自らの民族的Identityをしっかり認識した上で全方位的な視野を持っている。ここ数年、中南米や欧米から登場してきた新しい才能の中には、はっきりとこういった志向を持っている人材が目立つようになってきた。
さて、Embyoは米国からピアニストのMal Waldronや、Alto Sax奏者のCharlie Marianoといった音楽家を迎え入れてきたが、その最初期に忘れられない人物が存在する。〝Black Is Beautiful〟という言葉が世界に広まっていった時代を経て彼はドイツに姿を現した。Jimmy(James)Jacsonという黒人鍵盤奏者。Tangerine Dreamのデビュー・アルバム『Electronic Meditation』への参加に始まり、EmbyoやAmon Duul IIのアルバムで独自の個性を発揮した異色の存在。まだまだ、上述のような人種的壁を超越するような音には程遠いが、こういった試行錯誤が彼ら周辺のMusicianたちの音楽性を徐々に変革していくのだ。JacksonはNiagaraやUtopiaといったAmon Duul IIから派生したバンドにも参加している。本盤は、そんなJacksonが主体となって結成されたグループの作品である。
『Haboob』は71年にHorZuからリリースされた同名グループのアルバム。メンバーは鍵盤&VocalのJimmy Jacksonに、ギターのWilliam D. Powell、ドラムスのGeorge Greenの3人。African AmericanのJacksonは軍隊の一員としてドイツにやって来たが、他の2人も同じようにドイツに来たアメリカ人であった。Producerは管楽器奏者でAmon Duul IIつながりのOlaf Kübler。Jacksonは同年、ECM傘下のJapoからリリースされたMal Waldronの『Call』やAmon Duul IIの『Tanz Der Lemminge』にも参加している。本作でのJacksonはMunichのSound Engineerの手によって開発された<Choir-Organを多用したプレイが特徴的。このChoirをテープ録音したMellotoronライクなOrganのPsychedelicな音響は迫力十分。基本的にはJazz、R&Bのプレイが中心の人なのだろうが本盤ではジミヘン直系のPsycheなRockノリが前面に出ている。Amon Duul IIとジミヘン、そしてFunkadelic、Canが同居したようなサウンドはまだまだ荒削りで未消化ではあるが、新しい音楽を生み出そうとする意欲は伝わってくる。
アルバム1発目は殆んどジミヘン~Funkadelicといった影響丸出しの“Israfil”。Choir-Organの迫力がバタバタしたドラムスと相乗効果で迫ってくる前半が微笑ましい。途中からPsychedelicな展開になるのが当時のドイツらしい。
Blues Rock然とした“Blues For Willy Pee”。
いきなりエコーかけまくりのシンバル連打で始まる“Sooloo”は殆んどGreenのドラム・ソロ状態。Effectかけまくりのバックの音もTrip感が半端ない。
JoacksonのOrganでのインプロが炸裂する“Morning Prayer ”。
Greenの躍動感に満ちたドラミングから始まる“Keep On Pushing”はWilliamsのカッティングとJacksonのOrganがFunkyに絡み合うTrippyなFunk。Vocalは例によって何を言ってるかわからない。
ありがちなR&Bナンバー調“Soldier Boy”でもEffectかけたVoiceが面白いがチョイと凡庸すぎる出来で残念。
最後をシメるのはご機嫌なギター・カッティングとOrganで盛り上がるFunkyナンバー“Time To Be”。ワイワイガヤガヤと3人がタイトルを連呼しながら楽しんでるのが最高。SoulfulなShoutも飛び出し、高揚感に満ち溢れたナンバーで終わるところが良い。ちなみに、この曲はDJやる時に必ずSpinする大のお気に入り曲。
(Hit-C Fiore)