Voyour Extra Lucide/Francois Breant | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

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 忙しさにかまけて本を読む時間が激減していた。仕事も一段落してようやく余裕を持てそうになってきたので近くの本屋さんで数冊買いこんできた。久しぶりにSF小説やミステリ小説を読んでみようかという気分になった。そんな時のBGMはSynthesizer Musicを選択することが多い。 かつてフランスにEggというレーベルがあった。Barclay傘下にあったらしいのだが、このレーベルの作品が、なぜか70年代後半キングレコードから国内盤としてリリースされていたのだ。中古レコード屋さんで、読書のBGM用に70年代のSynthesizer Musicの音盤を漁っていた時に偶然このレーベルの作品に出会った。そのSFチックなジャケットと日本語の帯の文章に思わず惹かれて即買いであった。それは、あのBoris Vianのご子息だというPatrick Vianという人物のアルバムであった。これは失敗であった。とても読書のBGMに使えない代物だったのだ。それは音楽自体に存在感がありすぎて読書より音楽の方に夢中になってしまうからであった。そして、それからEggレーベルの音盤を安い日本盤の中古レコードで探し回ったのはいうまでもない。どれもがジャケットが神秘的、SF的であったのも大きい。Vangelis Papathanasiouの『Ignacio』やHeldonの名盤『Stand By』、GongのメンバーだったTim Blakeの2枚のソロ・アルバムもそこからリリースされていた。そんなEggレーベルの中でも特にお気に入りだったのがFrancois BreantAlain Markusfeldの音盤であった。ジャケットがSF的なMarkusfeldは日本盤ではなかったが安かったし、Breantの方は日本盤のタイトルがいかにもで、各曲のタイトルからSF的、ミステリー的なものを想像するには十分であった。多分10代の一番多感な時期だったこともあるだろう。ジャケットや曲のタイトルから連想される正に神秘的な世界に夢中になったものだ。Francois Breantといえば80年代にSalif KeitaのProducerとして成功をおさめてAfrican Music/いわゆるWorld Musicの世界でその名を知られる存在となっていたのだ。そちら方面も聴き出した頃に彼の名前を見つけて驚いたものだ。

 『Voyour Extra Lucide』は79年にリリースされたFrancois Breantの2ndソロ・アルバム。邦題は『視覚的音響』といういかにもなタイトル。ベースとドラムスにBreantが組んでいたバンドNemo時代の同僚Pascal Arroyo、Emmanuel Lacordaireが1stアルバムに引き続き参加している。しかし何よりもDidier Locwoodに鍵盤奏者のGuy Khalifa、Chorus隊にKlaus BlasquizLiza DeluxeStella VanderといったMagma人脈が参加しているのが嬉しい。
アルバムのオープニング“Poursuite sur le Peripherique Nord”は“北部での追跡”という邦題。Car Chaseが目に浮かぶようなJazz Rock調のナンバー。緩急のつけ方が上手いのと、アナログ・シンセの音色がイイ感じ。
続いてはタイトル通り真夜中の雰囲気ムンムンの“8 Aout 0H15 125-eme Rue”。Jean-Michel KajdanのJazzyなギターも雰囲気を出している。
Elegantなアコピで始まる“L'Amour au Grand Air”。
Mysteriousで荘厳なChorusが印象的な“Cadence D'Eperonnage”。
Danse Rituele Talmouse”はPercussionも絡んでHumorousな感もあるが、“タムルースの踊り”というタイトルを表現しているのだろうか?
Didier Locwoodの切れ味鋭いViolinソロが炸裂する“L'Eveil de L'Acrobate”。
エレピとFretless Bassが心地良いイントロの“L'Obus Rouille Trouve Dans la Dune”は唐突に歪系のギターやHystericなViolinが飛び出してくるのがスリリングで面白い。
幻想的で深遠な世界を描き出すSynthesizerに圧倒させられる“Les Funerailles du Voyeur
アルバムのラストは“We Are the Zoo”はMagmaのKlaus BlasquizStella Vander、Liza Deluxeが参加したElectric Opera荘厳なChorusTheatricalなVocalのかけ合いに絡み合う表情豊かなSynthesizerが面白い。
(Hit-C Fiore)