Tentacles/Stelvio Cipriani | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

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 いわゆるB級映画の中でもモンスターもの、中でも低予算で製作された二番煎じの巨大モンスターものが好きだ。一仕事終えた休日の午後などにまったり見るのが良い。特に70年代の胡散臭さ満載の作品はお笑い&脱力シーン連発でかなり楽しめる。巨大生物が海洋生物であったりした場合は、もれなく水着の美女も楽しめたりするのである。イタリア・アメリカ合作の映画『TentaclesTentacli)』は中でもお気に入りだ。タイトル通り巨大タコカリフォルニアの青い海に登場して大暴れする生物パニック/ホラー風B級映画。『Jaws』の二番煎じものだが、チープでズッコケ指数が高く、お約束の水着美人も登場するのでポイントが高い。音楽を担当したのは泣きのメロディーの魔術師Stelvio Cipriani。Ciprianiといえば76年に公開され昭和の少年少女が涙した『Dedicato A Una Stellaラスト・コンサート)』。この映画の音楽、特にThemeは、もう泣け!言わんばかりの涙ちょちょぎれもの。そんなCipriani先生が、巨大モンスターに問答無用のSweetなメロ攻撃、しかもElectroLounge Musicで応酬。生演奏に当時、流行していたSynthesizer MusicをMixさせて、ホラー風ではなく、あえて心温まる旋律をMoogで奏でる逆転の発想。この掟破りの大技が素晴らしい。エレピギターFluteもイイ感じの演奏。何よりドラムが最高。タイトかつノリ抜群でRoll多用のオカズがメチャクチャカッコイイドラマーは、もしかしてGoblinAgostinoではないだろうか?本盤はなぜかフランス盤であるが、このジャケットも大好き。

 『Tentacles』は77年に公開されたOliver Hellman監督の同名映画のサントラ盤。
いきなりリゾート気分満開の軽快なShuffleナンバー“Small Town Pleasures”。OrchestraもHappyな気分を盛り上げまくりだし、ドラマーは無駄にGroovyでテクニカルなフィルもキメキメっす。殆んどパニック映画のサントラとは思えない陽気なイタリアン節。Funkyなワウ・ギターが登場して真剣にレコード間違えてかけちゃったかな?と思ってしまう。
気を取り直して次は、お上品にWaltzを奏でる雰囲気もののエレピをバックに、Themeを厳かに演奏するFluteが胸に沁みる“She'll Never Come Back”。突然邪魔をするように人を食ったようなお笑いMoogが登場するのが面白い。
気分は“ラスト・コンサート”なお得意の泣きメロShuffleチューン“My Son's Friend Is A Champion Pisser”。転がるエレピFlute控え目なOrchestrationがまたまた効果的。
MinimalなエレピのイントロからMoogで海底散歩な気分のお気楽ノリの“Summer And Winter”。Stringsも優美に盛り上げる。
緊張感に満ちたハイハット・ワークを前面に出しつつ、Moogが奏でる泣きのメロディーが胸に突き刺さる“San Diego, Yellow Cab”。Strings Ensembleの音がいかにも70年代でGood!
ElegantなOrchestrationにおトボケMoogで始まり、SpacyElectro Waltzに展開する“Happiness Is Having Two Killer Whales As Friends”。Funkyなエレピに歌うベースライン、ここでもMichael GilesばりにRollスリリングなフィルを入れるドラムスが素晴らしい。
さてさて、やっとここでお待ちかねのパニック映画風の“Too Risky A Day For A Regatta”が登場。
しかし、ここでまたしてもメジャーセブンスのMooodyなTheme“Sorry, I Have To Go”がエレピとFluteとともに奏でられる。
追い討ちをかけるように爽やかサンなアコギとエレピでウキウキ気分の青春映画のThemeのような“Scotch For Two”。ここまで来ると逆にスゴイ。
The Capture Of The Giant Octopus”では、さすがにこの辺で重厚なサウンドで迫るかと思いきや、途中からアコギとStringsで夢見る気分に舞い戻り。
最後に登場する“Tentacles”で、やっと巨匠Ciprianiの凄味を知る。不穏なSynthesizerの響きが、いかにもな海底に深く潜む得体の知れない巨大生物の雰囲気を見事に出している。全編これで通さずに、この1曲のみに集約させたところにCiprianiの良さがある。
(Hit-C Fiore)