Martial Solal Trio At Newport '63/Martial Solal | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

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 大好きなピアニストMartial Solal。今年の8月には御年85歳になるSolalは、このところPiano奏法の著作やインタヴュー集しか出ていなくて、音楽作品としては2008年リリースのMoutin兄弟とのTrio作『Longitude』や2007年10月のVillage Vanguardで行われたソロ・ピアノ演奏を収録した『Live at the Village Vanguard: I Can't Give You Anything』からご無沙汰している。そろそろ、また爺のAggressiveに突き進むピアノが聴きたいものである。所謂、耽美的でキレキレイな欧州Piano Trioものとは一線を画す大胆かつSharpに想像力を喚起させるフレーズを挑むように次々と繰り出してくるSolal爺の、特にスリリングなPiano Trioは最高だ。枯れた爺のド渋な円熟の妙技も好きだけど、湯水のように湧き上がるフレーズを聴き手に突きつけてくるコワモテ爺の衰えを知らぬ創造力には感服である。Algeria生まれのSolalはOpera歌手とPiano教師を両親に持ち50年にParisに渡るとDjango Reinhardtや米国のSidney BechetDon Byasらと共演。53年に初リーダー作を録音している。若かりし頃は、その超絶技巧のテクニックゆえに、ややもすれば技巧に流される部分もみられるSolalであり、またその自己革新の才気ゆえに、実験的な試みやさまざまな分野への挑戦もみられるが、オーソドックスなPiano Trioとして、本盤はお気に入りの一枚。近年作での血中Free濃度高めの緊張感に満ちたPiano Trioとは違い、弾き倒しではあるが、とっつきやすい演奏である。だからといってSolalのJazzの伝統を重んじ熱いBop魂を感じさせながらもParisのEspritを端々に感じさせる個性は失われていないのは特筆すべきだ。さまざまなジャンルへ果敢に挑むSolalは、現代音楽の作曲家、指揮者Marius Constantとの77年作『Stress - Psyché - Trois Complexes』や、ご存知、Jean-Luc Godardの『A Bout de Souffle(勝手にしやがれ)』など映画音楽やLibrary Musicでも独自の才能を発揮している。しかし、その多彩な音楽性もさることながら、何をやっても自分の美学スタイルを貫くところは素晴らしい。本盤のような本場アメリカに単身で殴り込みをかけた作品でもSolalのオレ節は高らかに鳴り響いてる。

 『Martial Solal Trio At Newport '63』はMartial SolalPaul MotianTeddy KotickとのTrioで
63年に録音した作品。そのタイトルとは裏腹に、実はスタジオ録音という話もあるが、演奏の素晴らしさを前に、そんな事はどうでも良い。ParisでDaniel HumairGuy Pedersenと素晴らしいTrioを組んでいたSolalが、Paul MotianとTeddy KotickというBill Evansの初リーダー作である『New Jazz Conceptions』の時のメンバーとがっぷり四つに組んで本場にその名を知らしめた作品。Fats Wallerに影響を受けArt TatumばりのテクニックでBud PowellのBop道を極めながらもParisの香りを散りばめた演奏は圧巻だ。
オープニングの“Poinciana (the Song of the Tree) ”でいきなり全開っす。ブロック・コードとシングル・ノートが生み出す絶妙のコンビネーション。イントロからしてSolalの個性が素晴らしい。この曲は大好きなスタンダードであり、お気に入りのピアニストAhmad Jamalも何回もアレンジを変えながら演奏していたり、Guido Manusardiも取り上げているが、Jamalの『Live At Oil Can Harry's』でのアレンジと並びお気に入りである。
続いてDjango ReinhardtClouds(Nauges)”はイントロの粋なブロック・コードで始まり、しっとりと聴かせる。
Solal自作の“Suite Pour une Frise”は、これまたイントロからカッコ良すぎ。緩急を上手くつけ、粒たちの揃ったキレの良いタッチから次々と生み出されてくる流麗な旋律の嵐に脱帽。ComposerとしてのSolalの才能が如何なく発揮されている。
Stella by Starlight”は88鍵使い切るかのような左右自由自在に駆使された目まぐるしいPassageが飛び出し、SolalらしいAggressiveな演奏が楽しめる。
What Is This Thing Called Love?”も、キレの良いリズムが強調されたアレンジが目茶苦茶カッコイイ。
Thelonious Monkの“Round Midnight”。この曲に関しては、Solalのフレーズが次々に流れすぎる悪い面が少々出ているかもしれない。
Miles Davisの『Birth of the Cool』収録のGill Evans作“Boplicity”。MotianとKotickのコンビネーションも素晴らしく、フレーズにはParisのEpritを忘れないSolalの面目躍如。
最後は急速調の“All God's Chillun Got Rhythm”。最初から最後まで弾き倒しのSalalの驚異的なテクニックに圧倒される。
今日はこんなところで勘弁したるわ的なドリフの荒井注似の若き日のSolal、最高である。

On Green Dolphin Street


Moutin兄弟


◎90年のJean-François Jenny-ClarkDaniel Humairとの最強Trio。最高!
Triangle

(Hit-C Fiore)