Second Album/Martin Carthy with Dave Swarbrick | BLACK CHERRY

BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

$BLACK CHERRY
 1964年Paul Simonが失意の底で訪れたLondonで、彼に“Scarborough Fair”を聴かせたMartin Carthy。それは古くから伝わるEngland民謡であった。CarthyはSimonにギターの伴奏も教えたという。Paul Simonより以前にTV出演のために英国を訪れていたBob Dylanにしても、Carthyとの交流で英国民謡とギター奏法を学び、まあ何にせよDylanも、しっかり頂いちゃっている。Roy Harperあたりにしてみれば、その辺のところが許せなくて、Dylanはケチョンケチョンに言われているわけである。そんな中で当時、表向きには怒りを出すわけでもなく淡々と沈黙を守ったCarthyに対して、自分は何て心の広い人物なんだと驚いてしまった。問題が複雑なのはアレンジや演奏スタイルまで、そっくり自分のものとしてしまっているわけで、楽曲とは別に、それらに対しても参考にしたネタ元のCarthyに対しての何らかの言及がクレジットされているべきではないだろうか。まあ、元々Traditionalであろうと何だろうと、自作曲として自分のクレジットにしちゃうのは如何なものかDylanさんにSimonさんというHarperの気持ちは理解できるところがある(SimonはCarthyに金額を支払っていると主張しているが)。さて、このように米国のFolk歌手にまで多大な影響を与えたEnglandやIrelandに古くから伝わる伝承音楽。Martin Carthyは、その歌声や実にキッチリとPickingするギターのように実直でお人好しなのかもしれない。
自分は、そんなCarthyが大好きだ。Hatfield生まれで北Londonで育ったCarthyは、革新者Davy GrahamWizz Jonesに勿論Pentangleの2人やRichard Thompsonといった、Traditionalを独自のセンスと発想で進化させてきたギターの名手たちと肩を並べる存在である。SingerとしてのCarthyも実に味があって、その英国人独特の歌い方と声質は最初は取っつきにくい人もいるかもしれないが、人柄が感じられて個人的には大好きだ。ギタリストとしては変則Tuningを駆使してUilleann Pipesをギターで置き換えたり、独特のPercussiveなFingerpickingでTradに新しい道を切り開いた。またドラムレスのSteeleye Spanでのエレキ・ギターも印象深い。

 Martin Carthy with Dave Swarbrickの『Second Album』は66年にリリースされた。前年65年のデビュー・アルバムに続いてCarthyと名Fiddle奏者Dave Swarbrickとの名コンビ。彼らのPartnershipは、ひとまずはCarthyがSteeleye Span加入前の作品『Prince Heathen』まで続く。その後もこの2人のCollaborationは復活して、多くの名作を現在まで作り続けている。
アルバム1曲目は“Two Butchers”は軽快な歌と演奏で始まるが、元々は“The Three Butchers”とも歌われるTraditional English Folk BalladPete Seegerが50年代に歌い、アルバムに収録している。淡々と、しかし心に訴えかけるように歌うCarthyのVocalが良い。
続く“Ball O'Yarn”も無伴奏で歌うTraditional SingerとしてのCarthyの実力が伝わってくるナンバー。
SwarbrickのFidlleにのって朗々と歌われる“Farewell Nancy”。The John Renbourn Groupも『Live in America』で、この曲を取り上げている。
Bob Dylanが63年のアルバム『Freewheelin'』の“Bob Dylan's Dream”がメロディーを借用した“Lord Franklin”。この曲でのCarthyの生真面目な歌い方が胸を打つ。Pentangleの『Cruel Sister』でもJohn RenbournがGentleなVocalで歌っているが、こちらも最高だ。
SwarbrickのFiddleに導かれて始まる“Ramblin' Sailor”。こういった不規則な拍子、独特のずれていくリズムは一度ハマるとCarthyのVocal同様トリコになってしまう。
Lowlands Of Holland”はCarthyのGentleなVocalが、どことなく大好きなRichard Sinclairを連想させてくれるお気に入りの曲。
Fair Maid On The Shore”はやはりJohn Renbourn Groupが『The Enchanted Garden』で取り上げている。硬質なCarthyのVocalとSwarbrickのFiddleとのDuetに思わず身を正してしまう。
Davy GrahamPentangleも取り上げた“Bruton Town”。
Box On Her Head”はシンプルにノリも良くて思わず口ずさみたくナンバー。
Carthyの変則Tuningが効果的な“Newlyn Town”。
再び無伴奏の伝承歌で“Brave Wolfe”。
SwarbrickのFiddleのフレージングが何となく中近東風で面白い“Peggy And The Soldier”。
最後の曲“Sailor's Life”はJudy Colinsの61年のデビュー・アルバム『A Maid of Constant Sorrow』で取り上げられた曲だが、何といっても後にDave Swarbrickが加わるFairport Conventionの69年のアルバム『Unhalfbricking』での名演で知られる。
◎90年のステージから
Savoy/Martin Carthy with Dave Swarbrick

◎昨年2011年の名コンビ
Byker Hill/Martin Carthy with Dave Swarbrick

(Hit-C Fiore)