
Johnny AlfがBossa Novaの誕生に果たした役割の大きさは言うまでもない。60年代のAlfのアルバムも大好きだが、個人的には70年代のアルバムを聴く機会が多かった。Clubのピアノ弾きとして鍛え上げたピアノと、その男伊達なVocalはJazzの影響を受けた渋くて小粋な大人の音楽であるが、70年代に入って柔軟なスタイルを見せ始める。女性Chorusやエレピ、時にはClavinetまで取り入れた洒脱な音楽を聴かせてくれる70年代のAlfの作品はとても魅力的で、夢中になってアルバムを捜し求めたものだ。名曲“Ilusao a Toa”を収録したChorusのArrangeがお気に入りの71年作の『Ele E Johnny Alf』やJoao Donatoとの共同ProduceでエレピやClavinetが躍動しAlfのVocalも冴えまくる78年作の『Desbunde Total』は本当に良く聴いた。しかし、やっぱりEgberto Gosmontiの曲を採り上げ、Gimonti自身も演奏やArrangeに参加していたという本盤は最高である。どうしても欲しかったのである。それにしてもJohny Alfという人は作曲家としてもModernな感覚が群を抜いているが、貪欲に新しい音楽に対しても日頃から感心を持ち続けていたのだろう。本作でIvan LinsやMilton Nascimento、Gilberto Gil、Gonzguinhaといった当時、輝きを放っていた将来のBrasil音楽祭を引張っていく次世代の作曲家の作品を取り上げたAlf。その先見の明は類まれなる音楽センスと懐の深さあってこそであろう。
『Nos』は74年にリリースされたJohnny Alfのアルバム。Brasilの後輩の才能ある音楽家の楽曲と自作曲を交互に並べるAlfの意欲作。に加えてPaulo MouraというクラシックやJazz、そしてBrasil伝統音楽にも精通したマルチ管楽器奏者が参加している事がこの作品を意義のあるものにしている。
アルバムのトップを飾るのはEgberto Gismontiの“Saudacoes”。エレピとGismontiによる、あくまで歌を際立たせる抑え気味のOrchestrationとアコギが光る。多幸感に満ちたこの名曲は、Rhythmが独特で歌うのが大変難しい曲だがAlfは頑張っている。
哀感を湛えたAlfのVocalとOrchestrationが絶妙の“O que E Amar”。この曲もAlfのVocalのメロディーラインが浮かび上がるように考えぬかれたGismontiの立体的なArrangeが素晴らしい。
深くエコーがかかったScatにピアノの連打、そうIvan Linsの“Um Gosto de Fim”はAlfの深みのあるVocalに酔いしれる。Lins自身がピアノを弾き、後半盛り上げまくるOrchestrationも良いが対照的にCoolに歌うAlfがイイ感じ。
呼応するかのようにエコーがかかったAlfのVocalとOrchestrationで始まる“Acorda Ulysses”。こちらもピアノの響き、Stringsのスリリングなラインが絡み合い、時に不穏な瞬間を作りだすGismontiのArrangeが最高。
ギターの爪弾き、とPaulo MouraのFluteの響きとMildなAlfのVocalがが何ともいえないGilberto Gilの“Musico Simpre”。
Wagner TisoのArrangeによるOrchestrationをバックにGentleに歌い上げる自作の“Nos”は名曲中の名曲。Paulo MouraのSaxも最高。
エレキギターをバックに始まる“Outros Povos”はMilton NascimentoとMarcio Borgesの共作。勿論ArrangeはWagner Tiso。この曲もOrchestrationが素晴らしい。そして後半にChorusが重なってくるところの快感は一体なんなんだろう。
Avantgardeなイントロで驚かされる“Plenilunio”はHornとPercussionが心をかき乱しながら徐々に穏やかなピアノの調べに嵐が静まっていくかのようなGismontiのArrangeに驚かされる。Alfのスケールの大きい表現力豊かなVocalは、こういうナンバーに映える。
ユニゾンによる魅力的なイントロに導かれて始まる“E Um Cravo Tem Espinho”は Rio de Janeiro生まれのGonzguinha作の素朴さと洗練が同居する大好きな曲。
ラスト・ナンバーは、溌剌としたHorn隊にエレピにFlute、そしてAlfの小粋なScatが極上の味わいのインスト“Um Tema Pro Simon”。Harmonica、Saxソロも最高。
(Hit-C Fiore)