
最近、DJなどやらせていただく時には、Charles MingusとPaul Hindemith、Egberto GismontiとGentle Giantのナンバーは欠かせない自分の定番ものとなっている(定番といえば勿論、最後にかけるキャンディーズのアレもであるが)。彼らの曲は必ずつなげているわけだけど、踊っている人に、もし、それらの曲の親和性の高さを感じてもらえたなら幸せである。それはPolytonalityや12音技法という彼らに共通している音の色彩感だけに限ったものではないのだけれど、この辺については、また別の機会に書かせていただくとして、Rhythm、Beat、ノリというものはいかに複雑でおもしろいものかという事を日々感じている今日この頃である。例えばSwingしないと所謂Jazzファンには聴こえるRhythmが内包する民族音楽的な複雑なノリがある。Mingusは、この辺の使い分けが絶妙である。また、同じ黒人だからといって、皆同じ黒いノリを持つわけではないのが、音楽の面白いところである。
さて、本日ご紹介するのはLarry Youngの音盤である。個人的にはLarry YoungといえばElvin JonesやTony Williamsといった凄腕ドラマーと渡り合ってガチンコ勝負してきた硬派で熱血格闘系Organ奏者というイメージがあった。OrganのColtraneなんていう異名もあって、FunkyでBluesyな持ち味のJimmy Smithとは異なる、Mode奏法を取り入れたAggressiveな弾き倒しスタイルが印象的だ。また異種格闘技もドンと来いで、The Tony Williams Lifetimeでの印象もあって、John McLaughlinやJimi Hendrixとの交流もあったYoungはどちらかというとストロング・タイプの直線的なノリが前面に出たOrgan奏者としての作品が目立つ。そんなYoungが、まさかエレピやMoog弾いて、女性Vocalを入れたり、ましてやDuetしたりするFunkyな音盤を作るとはまったく想像できないわけであった。とはいえ、YoungはMiles Davisの『Bitches Brew』でエレピを弾いていたりするわけで、案外芸風の広い人なのであった。Woody ShawやJoe Hendersonといった大好きなメンツ66年作のBlue Note盤『Unity』好きだが、本盤のFunkyなYoungも魅力的である。
『Larry Young's Fuel』はLarry Youngの75年作。前述のようにFender RhodesやMoogを弾きまくるYoungの黒い部分が前面に出た躍動的な作品。ベースがFernando Saunders、ドラムスにRob Gottfried、ギターにSantiago Toranoというメンツ。
アルバムのオープニングはハイハットのリズミカルなパターンと妖しさタップリのLaura Loganの女性Voiceにやられる“Fuel For The Fire”。Youngのエレピも頑張っている。
“I Ching (Book Of Changes)”は、ありがちなThemeではあるが、Funkyで粘りのあるRhythmが安直な弾き倒しFusionに陥らないよう救っている。
これまたブリブリのベースとBitchなVocalが最高の“Turn Off The Lights”。
“Floating”はお気楽Funkなノリが、以前のYoungからは想像できないが、息抜きにこういうのもアリっしょ。
“H + J = B (Hustle + Jam = Bread)”はうねるベースラインと浮遊感漂うエレピ、そして対照的にチープなSynthesizerが面白い。
“People Do Be Funny”はTempoを落として所謂ユルファン、緩めのノリが心地良いFunk。
最後を飾るのはYoungが、なんとVocalを担当する“New York Electric Street Music”。決して上手いとは言えないYoungのVocalは賛否両論あるだろう。しかし、調子こいてDuetまでしてしまう、この何とも悪ノリ&ズッコケ感は案外面白いものである。
(Hit-C Fiore)