
Chuck Brownが旅立ってしまった。" The Godfather of Go-Go"として知られる偉大な人物であるBrownについては、また別の機会に書きたいと思う。入院していたのは知っていたが復活を信じていただけに残念極まりなく、まだ事実を受け止められないでいる。13日にはDonald “Duck” Dunnが東京公演後に、この世を去ったばかりである。2人ともまだまだ現役で頑張っているイメージが強かったから、尚更ショックである。心よりご冥福をお祈り致します。
さて、Arkansas生まれのVersatileなBlues SingerといえばJimmy Witherspoon。40年代から活躍してきたJump Blues Singerであり、97年に亡くなる寸前まで精力的に活動を続けていた、見るからに絶倫系のルックスが印象的であった。個人的には、お気に入りのギタリストRobben FordとのLive盤で、その存在を知って、男っぽい深みのあるVocalにはまっていったのである(この頃のRobenは最高)。そのLive盤での2人はともに、BluesとJazzの混じり具合が最も美味な塩梅であって、自分にとっては正に好みど真ん中であったのだ。あのCharlie Parkerも在籍していたJay McShannの楽団に入り、45年に初録音を残しフロントとして活躍してきたWitherspoon。独立後も、そのDynamicかつSharpなVocalで浮き沈みがありながらも半世紀以上も歌い続けてきたのはスゴイ。元々はBlues Shouterであった彼は、59年の『Jimmy Witherspoon at the Monterey Jazz Festival』ではBen WebsterにColeman Hawkins、Roy Eldridge、ピアノにEarl 'Fatha' Hines、ドラムスMel Lewisなどという超豪華なメンツと共演して、一気にJazzの世界にも挑んでいくわけである。それでも「ベイビー、今夜抱きしめて、俺がモンノスゴイ男だとわからせてやるぜ」的なコテコテ絶倫系Bluesを歌ってしまうところが素晴らしい。60年代には、欧州公演を行い、英国のDick Morrisseyともアルバムを制作している。 Jazz Bluesのみならず、時にはFunk Bluesや、ルーツにあるGospelを少々甘口にやってみたり、またはEric BurdonやVan Morrisonとの共演に至るまで50年代末以降は多作で絶倫街道を突っ走り、間口が広がりすぎた感はあるが、何をやっても男くさいBlues魂が感じられる歌いっぷりがWitherspoonの魅力である。
『Evenin' Blues』は63年にPrestigeからリリースされたJimmy Witherspoonのアルバム。Jazz Blues路線ではあるが、本盤では、大好きなT-Bone Walkerがギターを弾いている。また、Clifford ScottのSax、Bert KendrixのHammondが中々イイ味を出している。
Opnerの“Money's Gettin' Cheaper”はMod好みのナンバー。HammondとイナタイTenor、T-Boneのギター、そしてWhiterespoonのコクのあるVocal、歌詞も最高である。Jay McShannとの共作。
テンポを落として貫禄十分の“Grab Me A Freight”。T-Boneのギターが絶妙の絡みである。
続いてはRoy Hamiltonの歌唱で知られる“Don't Let Go!”。R&B調のナンバーで、サビのおどけたタイトルの連呼も、対照的に渋みのあるWitehespoonの歌声が良い。
濃厚なSlow Blues“I've Been Treated Wrong”。SaxのRiffとベースがJazzyで良い。淡々と盛り上げるHammondとギターも素晴らしい。
タイトル通り夜の雰囲気が憂いを湛えたVocalから感じられる“Evenin'”。
ノリノリの自作曲“Cane River”はKansas City Bluesを受け継ぐWithespoonの面目躍如。T-Boneのギターも素晴らしい。
Leroy Carrの名曲“How Long Blues”は、やるせない気怠い雰囲気をWitherspoonがDeepに歌い上げるのが圧巻。同じ都会的な持ち味でも、この表現力に脱帽。
お待ちかねのJump Blues“Good Rockin' Tonight”は絶倫ぶりを発揮する歌詞も含めて最高。
Jerry Leiber and Mike Stoller作のR&B“Kansas City”はバックの演奏も魂の入ったノリで勢いに満ちている。こういうナンバーではHammondとSaxがイイ。
最後をシメるのは自作の“Drinking Beer”。オヤジノリだがDandyな部分も見え隠れする持ち味が発揮されている。豪快さと繊細な表現力、下世話さと都会的で洗練された大人の男のDandyism。この相反する部分が共存するところがWitherspoonの魅力である。
もう、最高っす。
↓
◎Money's Gettin' Cheaper/Jimmy Witherspoon & Don Weller
(Hit-C Fiore)