Introspection/The End | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

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 タイミングというのは大切である。例えば音楽家が作品を発表したり、ギグなどでお客さんに演奏を披露するタイミング。例えば現在の日本では、良いか悪いかは別にして、作品を発表するにあたり、TVやラジオ、雑誌や新聞、ネット上でもさまざまなPomotionやタイアップが組まれ、微に入り細にわたったMedia Mixが至るところで展開されているのは当たり前の世界になってきている。だから絶妙なタイミングで作品がリリースされる。そして、いつの時代でも世の中の流れというものがある。そういった事情を一切気にすることなく自らの信ずる作品を世に出せるというのが理想の姿ではある。しかし抗うことのできない時代の波に翻弄されて、作品本来の出来の良さにもかかわらず商業的な成功をおさめることのできなかった人々もいることを忘れてはならないと自分は思う。例えば、The Rolling StonesBill WymanがProduceを手がけCharlie WattsNicky Hopkinsが参加しているという事で知られる本盤が唯一のアルバムとなったThe End。Late-60sなPsychedelic Pop感覚に彩られた本作は残念ながらPsychedelicの波に乗りることはできなかった。本作がリリースされた69年には、時代を席巻したブームは終わりを迎えつつあった。67年にリリースされたThe Beatlesの『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』、そしてStonesの『Their Satanic Majesties Requests』。Pink Floydのデビュー・アルバム『The Piper at the Gates of Dawn』や The WhoのPsycheな名曲“I Can See for Miles”を収録した『The Who Sell Out』も同年のリリース。それらに続いて The Holliesの『Baterfly』やThe Moveのデビュー・アルバムやThe Prety Thingsの『S.F. Sorrow』やSmall Facesの『Ogden's Nut Gone Flake』が68年が終わるまでにリリースされた。極めつけは67年に録音されていたThe Zombiesの『Odessey and Oracle』という一大傑作。これらの作品はPsychedelicな魔法がかけられた極上のものであった。いずれにしてもSummer of Loveが世界中を駆け抜けた後の69年にひっそりとリリースされた本盤はタイミングを逸してしまった。だからといって、この作品の価値が落ちるわけではない。むしろPsychedelic Popとして、それなりに完成度の高い作品といっても異論はないだろう。Stonesびいきの自分として彼らを気に入りProduceを手がけたBill Wymanは何気に、そのセンスを認めているのだ。Stonesでも、目立ちこそしないがリズムに立体感を与える独特のベースラインや、そのむっつり助平な人物像がポイント高い。なんたって自分のグループRhythm KingsGeorgie Fameを迎えるセンスの良さ。そこには、The Endのメンバーであり、引き続きWymanがProduceした後進グループTucky Buzzardを経て参加したTerry Taylorの姿がある。

 『Introspection』はThe EndDeccaからリリースされたデビュー・アルバム。The EndはベーシストのDave BrownとギタリストのClin Griffinが在籍したThe Innocentsが母体となっている。2人は鍵盤奏者のNick Grahamらと5人編成のThe Endを結成した。もう1人のギタリストTerry Taylorはスペインで活動していたが、Deccaに見出されて途中からバンドに参加している。
アルバム一発目は、タイトルがいかにもな“Dreamworld”。チョイとズッコケ入ったドラムのイントロだけど演奏に入れば中々締まったリズム隊がPopでPsycheな曲調を盛り上げる。Hammondと気だるいChorusも雰囲気が出ていて良し。
ギターのColin Griffin作でギターとVocalの幻想的なイントロから始まる“Under The Rainbow”はタイトル通りの夢見心地のChorusが心地良い。
Bill Wyman作の“Shades Of Orange ”はCharlie WattsがTablaを叩く。
ノリノリのBeatに気怠げなChorusがPsychedelicな雰囲気に溢れる“Bromley Common”。
哀愁のイントロから高揚感あふれるHarmoney Popに展開する“Cardboard Watch”。
お待ちかね、激カッコイイBeatで繰り出されるアルバム・タイトルナンバーの“Introspection (Pt. 1)”。
Hammondの何かが始まりそうなイントロに続いて、彼らが得意とするであろうベースが動き回り、ドラムスが少しタメぎみに16ビートを叩く出すリズムが気持ち良い“What Does It Feel Like”。
Don't Take Me”も、これまたタメをきかせたBeat感に物憂げなChorusをのせたナンバー。
Nicky HopkinsがHarpsichordを弾くWyman作“Loving, Sacred Loving”。
Saxが飛び出す“She Said Yeah”。
アルバム最後はご機嫌な“Introspection (Pt. 2)”。インストに重点が置かれた仕上がりが良い。
(Hit-C Fiore)