Lost in a Lover's Dream/Georgie Fame | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC


 Georgie Fameといえば、多くのファンがイメージするのは、何といっても洒脱なHammondの弾き語りであり、60年代当時から現在に至るまでMod達を夢中にさせたデビュー・アルバムにして熱気溢れるLive盤の大傑作『Rhythm And Blues At The Flamingo』から3rdアルバムまでに顕著な、R&B、Soul、Ska、Jazz、Blues、CalypsoにR&Rといった様々な音楽を彼流に粋に料理したHipな音楽であった。The Blue Flamesを一旦解散させてBig Bandをバックに歌うようになってからのGeorgie Fameの作品は、そういった初期の作品を愛するファン全てからは熱い支持を得ることができなかった。Harry SouthのBig Bandと共演した『Sound Venture』はElvis Costelloもお気に入りだというのも良くわかる傑作だし、Count Basieの楽団とも共演したGeorgieのJazz志向は一定の評価を得たにもかかわらずレコード会社はPop StarとしてのGeorgieを求めたし、初期のBrain DrainなGeorgieを求めるファンにとって、Big BandをバックにJazzを歌うGeorgieは渋すぎたのかもしれない。自分もそうであった。しかし来日公演などでGeorgieのステージを体験した人であれば、そのSmokeyな声で歌うJazz Singerとしての魅力もわかっていただけるはずだ。特に洒落のめしたVocaleseは最高である。Hoagy CarmichaelAnnie Rossと共演した『In Hoagland 1981』や『A Portrait Of Chet』といった80年代にGeorgieが残した作品の素晴らしさがわかるようになったのは大人になってからであった。そして2000年代にリリースされた大好きな『Charlestons』や『Poet In New York』とともに本作も自分にとって、ずっと聴き続けるEvergreenな魅力に溢れるアルバムとなったのだ。

 『Lost in a Lover's Dream』はGeorgie Fame2012年にリリースしたアルバム。ギターとベースだけをバックにしたDrumlessのサウンドは渡欧したChet Bakerが好んでいたフォーマットであり、数々の名作を残しているが、このIntimateなセットでGeorgieのVocalの魅力がよりVividに伝わってくる。この作品はCroatia出身のVibraphone奏者/作曲家のBoško Petrovićに捧げられている。80年代のまだYugoslavia時代に、彼の地に招かれPetrovićとギタリストDamir DičićのBig Bandで歌ったGeorgie。その後PetrovićがZagrebに設立したB.P. Jazz Clubに定期的に出演していたという。同Big BandのベーシストMario MarvinとSloveniaのギタリストPrimož GrašičをバックにGeorgieが2011年に他界したPetrovićへの思いを込めて制作した心温まる作品となった。最初はシンプルで地味に感じるかもしれないが、Georgieの歌声と楽曲の魅力が何回も聴くうちにじんわり沁みわたってくる。深まりゆく秋にピッタリの大人のための音楽だ。
アルバムは盟友Andy Fairweather-Low作の“Wide-Eyed and Legless”で幕を開ける。Bossa調で実に心地良いギターの爪弾きにGeorgieの温かみのあるVocalが良い。
Standardの“My Foolish Heart”や“Cry Me a River”、“Don't Blame Me”ではJazz Singerとして渋い歌声を聴かせるGeorgieが今でも絶好調なのがわかる。
Georgie自作のBluesyな“Skiing Blues”も沁みますなぁ。
Blossom”は勿論、あの名曲の再演。“Sweet Georgie Fame”を書いたBlossom Dearieに捧げられたいつ聴いても素晴らしい名曲中の名曲。
しっとりと歌い上げる自作曲“Say When”。
Medley: There's No More Blue Time / Breezin' All the Way ”はGeorgieのお気に入りのTad DameronのナンバーとBen SidranばりのCoolなTalk- Singingが渋い“Breezin' All the Way”との組み合わせが絶妙のメドレー。
Georgieらしい洒落っ気GentleでBluesyな歌声に痺れる自作曲“Singing Horn”。大人の男の色気が感じられるVocalが素晴らしい。
Gershwinの“I Can't Get Started (With You) ”も惚れ惚れする歌いっぷり
Bluesy小洒落た中にHumourousな味わいが最高の“How Blue”。
最後を飾るのはタイトル曲のBalladLost in a Lover's Dream”。Georgieの甘く切ないVocalの魅力が発揮された胸に迫る名曲でアルバムは幕を閉じる。
Lost in a Lover's Dream/Georgie Fame

(Hit-C Fiore)