Jailhouse Blues/Sam Collins | BLACK CHERRY

BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC


 Dさん復活祭の『Black Messiah』は、聴きこめば聴きこむほどわからなくなってくる。Strings口笛SlideChorus歪んだギターもRhythm隊もあり得ない音響で既存のGrid感を無視して時空を歪ませていく。最初は、あのBlack Music史を塗りかえてしまったVoodooの深みや混沌、Rhythmの深化ばかりを求めていたために、もっとわからなかったが、聴きこむほどに、中毒性の高いこの音楽のMagicに惹きこまれていく。何も変わってないという人がいるとすれば、それは、ある意味で正しい。D'Angeloの身体に染みついたBluesGospel感覚はずっと継続している。過去と未来を繋ぎ、Africaと欧州と中南米と米国を繋ぐ時空を超えた多層的な世界を描き出しながら、そこにはD'AngeloのBluesが常に感じられる。前作との変化を感じ取れる人は、しかしもっと素晴らしい感性を持っている人だろう。そして、閉塞感の漂う部屋のドアを開けて、口笛吹いて仲間たちStreetに繰り出そう。
 技巧や表現力、センス、それらに長けた音楽家は勿論素晴らしいと思うが、時としてPrimitiveな初期衝動だけで強いインパクトを残してくれる音楽家も、自分にとっては大切な存在だ。それはPunkであれ、Jazzであれ、Bluesであったとしても、そこにある一途なまでの思い込みだろうと何であろうと、自分の思いを伝えようとする強い意志が伝わってくる音楽には心惹かれてしまうのである。と、同時に卓越した技術などがなくても、とにかく何かを伝えたい、伝えようとする彼らの情念が作品に宿って独特の魅力を放つのである。それは何も激しい衝動や猛烈なエネルギーを感じさせるものだけではなく、いわゆる脱力し飄々としたものの中にも、思いの強さ、何とも言えない心情を感じさせる魔法のような魅力があったりする。戦前Bluesを聴いていると、そういったものが伝わってくるようになったのは最近のことだ。それまでは、その良さが自分にはわからなかったのだ。Mississippi出身のSam Collinsの歌とギターを聴いていると、その独特のFalsettoKnifeを使ったSlideの魅力に夢中になってしまうのだ。

 『Jailhouse Blues』はSam Collins27年31年に録音した音源を収録した作品集。Mississippi Blues特有のDelta感覚とは異質のBluesがここにある。
Devil in the Lion's Den”はCanned Heatが影響受けまくりというか、そっくりただいちゃってるCollins節が聴ける。
Slow Mama Slow”は枯れた侘び寂の世界。
Jail House Blues”もCollins独特の世界。いわゆるMississippi Bluesと一言で言い表せない個性が素晴らしい。
Slideを使わないRiverside Blues”も飄々としたCollins節が冴える。
地声で歌うNew Salty Dog”はPapa Charley Jackson作。
放浪をThemeにした最も古い記録されたBlues“Yellow Dog Blues”もCollinsが歌いSlideを弾くと、しっかり哀感漂う自分の世界になっているのがイイ。
Minstre調の“Pork Chop Blues”。
Dark Cloudy Blues”は指弾きでの枯れたBlues
Tempoを上げた軽快な“Hesitation Blues”。この曲はその後、改作されてしまうがLead BellyEarl Hinesなど数多くの音楽家が演奏している。Rev. Gary Davis、そして彼に影響を受けたHot Tunaが取り上げて多くの人に知られるようになった。
ずっと地声で押し通す“It Won't Be Long”はいわゆるBluesの範疇からは外れるかもしれないが、SlideをまじえたギターとVoclはBluesyだ。
踊り出したくなるHokumスタイルの“Do That Thing”。
Slideが印象的な“I Want to Be Like Jesus in My Heart”は宗教歌
Loving Lady Blues”も典型的なCollins節。VocalとギターでCall And Responseしている一体感が良い。
CCRLead Bellyでお馴染み、大好きな“Midnight Special Blues”。
宗教歌の“Lead Me All the Way”はSkipp Jamesがタイトルを変えて吹き込んでいるVersionも良い。
最後をシメるのはCollinsの歌声とギターが沁みまくるGraveyard Digger's Blues”。
(Hit-C Fiore)