
大瀧 詠一さんの『A LONG VACATION』や漫画『ハートカクテル』あたりをPunkのお兄さんお姐さんたちがボロカスにこきおろして嘲笑していたのを、かつて一緒になって笑っていた自分が言うのもなんだが、昨今のはっぴいえんどをdisるオレってカッコイイ中二病は失笑モノである。人間誰でも好き嫌いはあるだろう。確かに神棚に飾る扱いはどうかと思うが、実際に良い曲が多いのも事実なのだ。でも今でも、自分は大瀧さんのVocalは苦手なのだが。さて、どうかファンの方は怒らないでほしいのだが、実はBryan FerryさんのVocalも個人的には、どちらかといえば苦手なのである。しかし、この人のなりきりキャラは、どこか憎めない、どちらかといえばRichie Blackmoreさん同様に愛すべきところがあり、大好きなのである。そしてFerryさんの独特のVocalを浮かび上がらせるバンドの音が実に癖になるのである。従って、そのバンド・サウンドとともにFerryさんの歌う姿を想像しながら、そのVocalを聴くと、あら不思議、これが奇妙な味わいのある音楽として響いてくるのである。自分のソロでもRoxy MusicでもFerryさんは、バックを固めるMusicianの選択が中々イイ感じである。特にベーシストに関しては素晴らしくて、John GustafsonやAlan Spenner、John Wetton、Herbie Flowers、Gary Tibbsといった個性と黒さと味もある素晴らしいベーシストを起用するところが気に入っている。そのせいか、バックのサウンドが適度な黒っぽさを持ちつつ、退廃的で耽美的な英国人らしさも混在している。Ferryさんは、David Bowieとは別の意味で、SoulやR&B、Jazz、Bluesといった黒人音楽に対する独自の視点を持っているようだ。さらに、Roxyの『Manifesto』以降のNew Waveに影響を受けつつ独自の音響に対するこだわりがソロ『Boys and Girls』あたりで絶頂期となる。ドラムスと鍵盤は確かに時代を感じさせてしまうが、この時代にこれだけのStylishな音作りをしたRhett DaviesとMixを担当したEngineerのBob Clearmountainの功績は大きい。D'Angeloの『Black Messiah』を最初に聴いた時、思い浮かんだのは意外にもGodley and CremeのChorusとFerryさんの『Boys and Girls』で複数のギタリストによってかき鳴らされるギター・サウンドであった。
『Flesh + Blood』はRoxy Musicが80年にリリースしたアルバム。ProduceはRoxy MusicとRhett Davies。FerryさんとギターのPhil Manzanera、SaxとOboeのAndy Mackayと濃ゆいお三方が核となり、前作から引き続きGresae Band~KokomoのベーシストAlan SpennerやAceの鍵盤奏者Paul Carrackさん、The VibratorsのGary Tibbsが参加。クリックに合わせるのが苦手なPaul Thompsonが抜けて何とAndy NewmarkやAllan Schwartzbergが叩いているのが面白い。黒いリズム隊に浮遊感のあるManzaneraさんのギターが気持ち良い。徐々に存在感が消えつつある大好きなMackayさんも本作では次作よりもまだ光っておりやす。
アルバム1発目はいきなりWilson Pickettの“In the Midnight Hour”。このスカシたイントロ、カウントとギターの音からして最高。
“Oh Yeah”は、PopながらFerryさん独特のこだわりが感じられる音。
“Same Old Scene”はAlan Spennerの重たいベースとAllan Schwartzbergのドラムスが素晴らしい。Phil Manzanera先生の計算されたDelayのきいたギターも気持良い。
重くうねるベースがこの時代らしい“Flesh and Blood”。ここから2曲続けてAlan SpennerとAndy Newmarkのコンビ。
“My Only Love”はMinimalなピアノのフレーズが印象に残る。Roxy Musicらしさが出た抒情的な曲調でFerryさんの歌い回しが良い。
“Over You”はPhil ManzaneraのArpeggioが絶品のPopで弾けたナンバー。
なんとThe Byrdsの“Eight Miles High”はFunkyなリズム隊で軽快なバックと耽美的なFerryさんの対比が面白い。
Japanあたりが大きな影響を受けたであろう“Rain, Rain, Rain”。うねうねベースとSynthesizerがこの時代らしくて良いですな。
“No Strange Delight”も時代を感じさせるSynthesizerが今聴くとイイ感じ。ベースのNeil JasonのSlapもいかにも。
最後を飾るのはFerryさんがデロデロとお得意の世界に酔いしれる哀愁のVinratoが炸裂するBalladの“Running Wild”。
◎Same Old Scene/Roxy Music
(Hit-C Fiore)