職人さんが好きである。年月を費やして磨きに磨きぬかれた匠の技。その道を極めた名人の仕事に接した時は心地良い。最初は敷居が高かったり、頑固な職人気質だったり、中には偏屈な方もいらっしゃったりするけれど、最終的に、その職人芸が生み出したものに対しては文句のつけどころがないからだ。先日、何気なく見たNHKの「プロフェッショナル仕事の流儀」で、日本が世界に誇る、すし職人の小野二郎さんの凛としたお姿が。実は、学生時代に寿司屋でバイトしていた時に、そこの板前さんに、二郎さんのお店に連れて行ってもらったことがある。それ以来、数えるほどだが、足を運んだことがあった。鮨を食べる時は酒を殆ど飲まない自分にはありがたいお店。とはいっても殆ど自腹では行った事がなかったりする情けない自分ではある。番組では、もう、ありがたい名言がビシバシ。極上の鮨を食べさせてくれる職人ならではの粋なこだわり。驚いたのは80歳を越えても現役で、背筋がピンとのび、颯爽と東京の街を歩き「さらに上を目指す」と断言される職人魂。ミシュランの三ツ星を獲得しても志は、その遥か上にある。いつまでも、さらに上を目指すチャレンジ精神。日本の誇りである。不器用で、仕事が遅く、叱られてばかりいたという二郎さんの「帰る場所がない」からツラくても人の何倍も努力して黙々と技を磨いたという言葉に心を打たれた。もう名言の嵐が続く。言葉にいちいち説得力ありまくり。中でも深く感銘を受けたのは、「無駄が極上を生む」というお言葉。「鮨を芸術の粋に高めた」名人は違いますな。「修行は、一生終わらない」というタイトルにもやられた。
さて、Cuba生まれの鉄人Percussion奏者Candido Camero。まだまだ現役活動中で、来年90歳。半世紀以上に渡って第一線で活躍を続けているのは驚きだ。CubaでMachitoと演奏活動を開始して50年代初期にNY進出。Dizzy Gillespieと共演し、Stan Kenton Big BandやBilly TaylorのQuartetに加わって一躍有名になった。Afro-Cuban Jazzの打楽器奏者としてBlue NoteやPrestige盤で何度もその名前を目にしたCandido。その他には個人的にErroll Garnerの54年作のLatinなアルバム『Mambo Moves Garner』やSonny RollinsのRCAからの62年作『What's New?』やWes Montgomeryの65年作『Bumpin'』はお気に入りだ。Jazz以外にも大好きな女性ギタリスト&S.S.W.のEllen McIlwaineの『Honky Tonk Angel』と『We the People』いう2枚のアルバムでも活躍している。
『Dancin' And Prancin'』はCandidoが79年にSalsoulからリリースしたアルバム。この年、Candidoは58歳。なんなんだ、このジャケットの肉体の若々しさは。気分はSpacy Disco。基本4つ打ちに神の手がLatinでFunkyな血を注ぎ込んだ。複数のチューニングの異なるCongaを叩き、絶妙に操りながらメロディーを奏でる名人芸。Conga以外にもBongoやClaveにCowbellでリズムにに彩りをつける。千の指を持つ男の乱れ打ちがダンス・フロアを揺らす。Candidoは元々Multi-Instrumentalistだけに打楽器以外のサウンドとの絶妙のバランスが素晴らしい。この時代らしいFender RhodesにMini MoogやArpといった鍵盤の響きがSpacyな空間を作り上げる様は、タイムレスな心地良さを生み出している。
アルバムのオープニングはタイトル・ナンバー“Dancin' & Prancin' ”で、聴くものは問答無用に腰を揺れ動かされてしまう。女性Chorusが頑固親父の叩き上げBeatにのってエロいっす。
“Jingo”、これはJohn Coltraneとの関係で知られるNigeriaのドラマーBabatunde Olatunjiのアルバム『Drums of Passion』に“Jin-go-lo-ba”として収録されていた曲のCover。この曲はSantanaも69年のデビュー・アルバムでCoverしている。
“Thousand Finger Man”は「おおっプ、プログレさんか?」というようなイントロで始まるが、「きゃんでぃ~ど」という女性の囁きや、4つ打ちに絡んで小気味良く打ち鳴らされるアコピのコード、柔らかなFender Rhodesの響きにSpacyなArpが心地良く響き、現在のフロアでも充分通用する。70年代後期とは思えないトラック。
“Rock and Shuffle (Ah-Ha)”は、さらに悩ましげな女性のVoiceが下半身直撃。この曲のみArgentinaの才人Carlos Franzettiが鍵盤&Arrangeで参加している。TrumpetにはLou Soloffが参加。他にもTromboneやSaxなどHorn隊のアレンジが素晴らしい。が、やはりRhodesやArpに加えてMini MoogやClavinetでエロティックで幻想的な、目くるめく世界を作り出している。
◎最高→Jingo/Candido
◎これは今聴いてもまったく古びていない→Thousand Finger Man/Candido
◎カッケーす→Mambo Inn/Billy Taylor Trio featuring Candido
(Hit-C Fiore)