今頃になって、こういう話題もなんだけど、昨年のThe Beatlesのリマスター音源に関する一種のお祭り騒ぎは、遠巻きに見ているような感じであった。それは決して関心がないわけではないんだけど。とにかく、自分よりも遥かに熱狂的な方々が沢山いる。羨ましい事にリアルタイムで体験した方々もいれば、Beatles解散後に追体験して、熱くなっていらっしゃった方々が上の世代で何人もいて、そういう先輩の話をなるほどと思いながら聞いていたのだ。驚いた事に両親ですらBeatlesリアルタイム体験世代でないという知り合いの学生さんなんかも熱心にリマスターを聴き入っていたようであった。世代や年齢なんて関係なく魅了されてしまうBeatles。リマスターされたMonoとStereo盤の違いについて熱く語る方々には、自分はとても適わないだろう。あらためてBeatlesというのはスゴイ存在なんだなと再認識。そういえば手伝っていたバンドには、Beatlesを完コピしてるのと、かなりアレンジして演奏するのとあって、どちらもBeatlesの音楽について、もう一度見つめなおす機会を与えてくれたりもしたのだった。彼らの音楽は、時代を超越した存在なんだと今さらながら思う今日この頃。
さて、個人的には、昨年の音楽関係のリイシューでは、この音盤がうれしかった。The London Jazz Fourの『Take A New Look At The Beatles』。確か何年か前に、かなり違和感のあるジャケットで再発されていたけれど、やっと"英国ジャズ幻の名盤LP復刻"なるシリーズで正規ジャケットでお目見えしたのだった。BeatlesのCoverというのは、当然だけど、Jazzの世界でも数多い。その中でもBeatlesナンバーを、洒脱でElegantな味わいもあるピアノとCoolなVibraphoneでSwingyに仕上げたThe London Jazz Fourのキラー・チューンは、フロアでも常に人気があった。Latinっぽく演奏してみたり英国人らしい捻りのきいたアレンジは、Hipで洗練されている。Mod Jazz Classicとして彼らの小洒落たナンバーをCompilation盤等で聴いた人もいるかもしれない。それにしても、このジャケットは良い、大好きだ。
『Take A New Look At The Beatles』はTony ReevesのProduceで67年にリリースされたThe London Jazz Four名義の唯一のアルバム。Tony ReevesはNew Jazz OrchestraやThe Mike Taylor Quartetで活躍したベーシスト。でも、一般的には、ドラマーJon HisemanのColosseumでの活動が有名。ReevesはTony Hatchなどとも仕事をしていた。London Jazz FourはピアニストのMike McNaughtをリーダーとする4人組。Vibraphone奏者のRon ForbesにBrian Mooreがベース、ドラムスはLen Clark。その後Mike McNaughtとBrian Mooreはマルチ奏者のJim PhilipとドラムスのMike TravisとともにL'J IVという名前で69年に『An Elizabethan Songbook』という、これまた最高のアルバムを残している。そして、このL'J IVが英国民謡をベースに優雅な英国Jazzを展開する謎のプロジェクトとしてアルバム1枚で終わり、McNaughtとTravisはTrumpet奏者Henry Lowtherのバンドに参加。そこで一緒だったベースのDarryl Runswickを誘いAtlantic Bridgeを結成する。関連記事→Atlantic Bridge/Atlantic Bridge
さて、この本盤は全11曲がBeatlesのCover。その中から数曲ピックアップ。
ドラムのブラシがカッコイイ“Please Please Me”はアップ・テンポでガンガン攻める。Vibraphoneが涼しげに響く。ランニングするベースも最高。
小気味良くPercussionが鳴り響きBeatlesの印象的なメロディーがAfro-Cubanなノリにのって繰り返される、いうまでもなく最高のMod Jazz Classic“Things We Said Today”。LATINと4ビートが交錯する疾走感にのったVibraphoneとピアノのソロが実に心地良い。
Jazz Waltzに仕立てた“A Hard Day's Night”のElegantな味わいもまた白眉。
ピアノがユーモラスに主旋律を奏でる“Yellow Submarine”。と思ったらアップ・テンポの4ビートで小気味良く展開していく。
◎Things We Said Today/The London Jazz Four
(Hit-C Fiore)