とうとうEdgar Froese まであの世に逝ってしまった。Edgarは、いわずとしれたTangerine Dreamの中心人物であり、バンド結成以来バンドを支え続けてきた唯一のメンバーであった。Edgar FroeseからGerman Electronic Musicの流れが始まったといっても過言ではないと思う。ピアノの教育を受け、ギターを学び、彫刻と絵で生計を立てていこうとした少年は、Psychedelic Rockの洗礼を受けて、音楽への興味が高まっていく。そしてSalvador Dalíとの運命の出会いが、Edgarをを実験音楽の世界へと駆り立てていく。ギター、ベース、ドラムスというありきたりの楽器編成によるRockの否定から未知の世界への探求が始まっていったのだ。そしてEdgarとKlaus Schulze 、Conrad Schnitzlerの3人による衝撃のデビュー・アルバムが世に出されて、彼らの実験の歴史が始まる。その後、時は過ぎ去り、メンバーが入れ替わり試行錯誤を繰り返しながらTangerine Dreamもまた時代の波に呑み込まれていってしまうのだが、彼らが積み上げてきた功績は誰も否定することができないだろう。通俗的になり実験性と前衛という重圧から解放されたかのように、80年代以降のTangerine Dreamは軽やかであった。77年に初のサントラ『Sorcerer』を手掛けたことが、その後の彼らの新しい方向性を暗示していたのかもしれない。そんな彼らのサントラ盤は軽視されがちではあるが、意外に掘り出し物もあるのである。84年のTangerine Dreamは数多くのサントラ盤をリリースしているのだが、その中でも本作は個人的にジャケットも含めて結構お気に入りである。
『Firestarter』は84年に公開されたStephen King作の小説が原作となったMark L. Lester監督による同名映画のサントラ盤。
アルバムの1曲目は冷ややかなSynthesizerの音色がCoolに響く“Crystal Voice”。
“The Run”もまた同様のSynthesizerが時代を感じさせるが、若干リズミカルな変化がついているのが興味深い。
彼らお得意の幻想的な調べで別世界へといざなう“Testlab”。ゆったりとした流れが心地良い。
MinimalなSequenceがただひたすら気持ち良い“Charly The Kid ”。
淡々と流れるSynthesizerに時代を感じさせるSyhthe Drumが意外に新鮮な響きの“Escaping Point”。
往年のTangerine Dreamを少し彷彿とさせる“Rainbirds Move”。
だんだんと大仰になっていく“Burning Force”。いかにもB級映画のノリなのが何とも。
効果音の使い方が抜群に上手い“Between Realities”。この辺はEdgar先生の独壇場。
泣きまくるギターの使い方が効果的な“Shop Territory”。
じわじわと恐怖が拡がっていく系というか、彼ららしい淡々とした中に独自の世界が口を開けて待っている“Flash Final”。
Minimalな打楽器のような響きと効果音、この時代の彼ららしいある種の通俗性を持ちながらも孤高の世界を描き出すさまが素晴らしい “Out Of The Heat”。
(Hit-C Fiore)