Zabriskie Point/Pink Floyd Jerry Garcia | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

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 今、現在においては、Countercultureなどという言葉はどこかに行ってしまったかのような同調圧力が有無を言わせず支配的な時代、いいね!強要の時代となっているような気がしてならない。「推しメン誰なんすか?」と聞かれて、「知るか、そんなもん!」と素直に言ってしまうとさまざまな支障が発生するような時代である。それはさておき、かつてCountercultureなる言葉が時代の主流となりえた時代に生まれたさまざまな文化、それは文学であり音楽、映画、美術、演劇、舞踏といったものが現代でどれだけ影響力を持ちえるか?という事は、今の時代に考えてみてもあまり意味がないと思う。かといって、単なるレトロ趣味で楽しむにしても、自分はリアルタイムで経験してきたわけではないので、実際に同時代を体験してきた人たちに比較したら感激や感動は当然少ないであろう。また、時代を体験していない故に、ある種の自分勝手な妄想や思い入れが事実を美化したり矮小化したりする可能性もあるし、当時の社会的背景も熟知せずにあれこれ語るのは非常に難しい。そういった時に音楽に関して言えば、詞の意味も考えることなく、ただ流れてくるものを感じるという無責任な行為が許されるのであれば、それは自分にとって嬉しいものである。例えば、本盤のようなサントラ盤は、ずっと一日中かけっ放しにして何も考えずにボーッとしていることが自分は気に入っている。Michelangelo Antonioniが監督した映画のサントラ盤である。Antonioniの映画では、勿論真っ先に上がるのは『Blowup』であり、そのサントラ盤は大好きであるが、本作はPink FloydやJerry GarciaJohn Faheyの名前につられて買った一枚である。 邦題で『砂丘』とタイトルが付けられた映画のサントラ盤は、ジャケットからして意味深であるが、John FaheyPatti Pageに混じってGarciaやFloydの紡ぎだす音楽が聴こえてくると時間を越えて、どこか別世界に連れていかれるようである。


 『Zabriskie Point』はMichelangelo Antonioniが監督した70年公開の同名映画のサントラ盤。

Pink Floyd の“Heart Beat, Pig Meat”は心臓の鼓動とOrgan、さまざまなSound Cllageによって生み出される想像力を歓喜させるPsychedelicな空間に引きずり込まれる。

David Lindleyが在籍したKaleidoscopeの“Brother Mary”はFiddleBanjoによる土臭い音がイイ感じ。

Grateful Deadの“Dark Star(Excerpt)”は『Live/Dead』に収録された同曲の抜粋で3分チョイで終了するが、このアルバムでのこういう流れはやっぱり気持ち良い。

再びPink Floydの“Crumbling Land”。VocalはDave GilmourRichard WrightによるC&W調で始まり、気怠いChorusがイイ感じのナンバー。途中で彼ららしい展開になり、後半のSound Collageもまた、らしい出来。

Patti Pageの“Tennessee Waltz”は、こういう楽曲の並びで聴かされると何とも形容しがたい不思議な感覚におそわれる。時空を飛び越えて異次元へTripしてしまったかのようだ。50年代の古き良きアメリカの時代。

The Youngbloodsの“Sugar Babe”はアルバム『Ride The Wind』収録のナンバー。C&W調だが、若さ溢れる勢いが感じられる。Harmonicaソロもイイ感じ。

Jerry Garciaのエレキ・ギター独奏による“Love Scene”。7分を超えるImaginativeな演奏は自由自在に、どこもまでも飛翔していき、無国籍風でPsychedelicな感覚さえ感じさせる。

1912年生まれのBanjo弾き語りのRoscoe Holcombによる “I Wish I Was a Single Girl Again”。Americanaなナンバーに、ここでもまた時間感覚が狂わされていく。

Kaleidoscopeのインスト曲“Mickie's Tune”。この曲もFiddleが何とも印象的。

贔屓筋のギタリストJohn Faheyの“Dance of Death”。個人的にはGarciaのソロとともに、このサントラ盤のキモ曲。

最後を飾るのはPink Floydの“Come in Number 51, Your Time Is Up”。このサントラ盤には3曲収録されている。この曲は3曲中もっとも彼ららしいナンバー。シングルB面で発表されLive演奏が『Ummagumma』収録された“Careful with That Axe, Eugene”の改作のような曲。Mysteriousに始まり中盤以降の鬼気迫る演奏が圧倒的だ。実は映画のためにFloydは3曲以外にも録音していたが結局使用されず、後にようやく、それらの曲は陽の目を見ることになった。

(Hit-C Fiore)