Country Home/Bronco | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

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 アメリカ南部音楽に憧れる英国人という永遠のテーマ。ジャケットといい、アルバム・タイトルといい、どう見ても土の香りが漂うアメリカンな作品のようなんだけど、この『Country Home』というアルバムは英国Blue-Eeyed Soul SingerであるJess Rodenが結成したバンドBroncoのアルバム。RodenといえばNorthern Soulなナンバー “Emergency 999”でSwinging Londonを文字通り躍らせたThe Alan Bown Set。グループ名がThe Alan Bown!となってRodenは脱退してしまうが、後任のRobert Palmerに負けず劣らずグループの看板Lead Singerとして、その名を轟かせた。また、Rodenが70年代に残したソロ・アルバムは非常に気に入っている。74年にリリースされた『Jess Roden』はLondonとNew Orleansで録音されたRodenの1stソロ・アルバム。特にProducerにAllan Toussaintを迎えMetersの面々と録音したNew Orleans録音が野性味あふれるFunkyなナンバーもあり、白眉である。また、77年の『The Player Not the Game』と80年の『Stonechaser』も大人な出来の洗練された作品。Mott the Hoopleの70年録音の『 Wildlife』やKeef Hartley73年作『Lancashire Hustler』にも参加していたのも興味深い。そして何よりPaul Kossoff73年作『Back Street Crawler』への参加である。英国はSteve WinwoodSteve Marriottという偉大なBlue-Eeyed Soulの名Vocalistを輩出しているが、その2人を筆頭に黒人音楽に影響を受けた才能あるVocalistが60~70年代にはひしめき合っていた。Jess Rodenは一般的な知名度こそ低いものの、英国が誇るBlue-Eeyed Soulの名Vocalistの1人であるのは疑いの余地もない。そんな彼が70年代に結成した2つのバンド、BroncoThe Butts Bandの音盤もお気に入りだ。Doorsのメンバーと結成した英米混合メンバーによるThe Butts Bandはともかく、BroncoのFolky米国指向丸出しの音は興味深い。例え商業的な成功を収めなかったとしても、これらの作品は今でも充分楽しめる。Paul Rodgersの後任としてFreeに入っていたらとか、Deep Purpleに入っていたらとかといった話は全く意味がない。同じ英国のMiller AndersonPaul Carrack、そしてTerry Reidといった優れたBlue-Eeyed SoulのVocalistたちのように、地味でもマイ・ペースで活動を続け、素晴らしい作品を残してくれるだけで嬉しいのだ。


 『Country Home』は70年IslandからリリースされたBroncoのデビュー・アルバム。ProduceはJess Roden。Jess Rodenは、その初期にはRobert PlantとJohn Bonhamが参加していたというThe Band Of Joyのメンバー達とBroncoを結成した。ギター2本入りの5人編成。The Alan Bown Set時代の盟友Jeff Bannisterが鍵盤でゲスト参加している。

アコギが心地良い“Time”や、時折みせる英国的な翳りがたまらないナンバー“Civil of You Stranger”は、やはり英国人が憧れるアメリカの音。

Roden単独の作品では、一転して仲間たちと陽気にアコギをかき鳴らす“Love”や、カントリー・テイストだが一筋縄ではいかない“Home”のBritish風味が面白い。

メンバー5人による共作の“Well Anyhow”もアメリカ指向の音だがアンサンブルはやっぱり英国的。

Misfit on Your Stair”はテンポを落としてBrirish Rock伝統の重たい音が顔を出すのが印象的。

Bumpers West”もHardな音に対抗するかのようなSoulfulなRodenのVocalがカッコイイ。この後半2曲はやっぱりイギリス人らしさが強く出てしまっているような。

結局、ルーツな音楽を求めていっても全体に薄く靄がかかった英国特有の黄昏感が出てしまうところが味である。

Jess RodenのVocalは基本Soulfulなんだけど、意外にこういうバックの音との噛み合わせも良い。この人はバランスが良いのだ。

Broncoは、アコースティックな本作も好きだが、Rodenの最後の参加作となった次作の『Ace of Sunlight』も大変気に入っている。

バンド脱退後、Rodenは上記のThe Butts Bandを結成、ソロを経てThe Jess Roden Bandを結成する。Stomu Yamashta77年作の『Go Too』にも参加している。ギタリストのRobbie Bluntは後にSilverheadに参加する。


◎JessRodenのOfficial Website→Jess Roden
80年代からNYでGgraphic Artistとして活躍していただけあってセンスが良い。

(Hit-C Fiore)