Between Blue And Me/Family | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

 最初は全く受けつけなかったのに、いつのまにか好きになって、気がつくとクセになってしまうものって意外とある。音楽でもそうだ。Roger Chapmanの声がそうだ。大好きなイギリスのグループFamilyのVocalist。好き嫌いがハッキリ分かれる声だ。英国独特塩辛いVocal。決して派手ではないけれど、Familyもまた英国的としか言いようがないサウンドである。Psycheで牧歌的でHardでTrad風味もあったり、良くも悪くもつかみどころがないBritish Rock。メンバーの入れ代わりはあっても、そのイギリスの曇った空のような音楽は不変だ。アルバム『Fearless』のオープニングを飾るナンバー“Between Blue and Me”は、大好きな曲。BluesyなRoger ChapmanのVocalが素晴らしい。この曲では、クセの強いChapmanのVocalは幾分薄められている。Shoutせずに穏やかに歌う時のChapmanのVocalはCat StevensGenesisPeter Gabrielや時としてRough Trade時代のScritti PolittiGreenを思わせる時もある。最初は苦手意識を持っていた自分が受け入れられたのは、この曲を聴いてから。その後、Familyの音楽を聴いていくにつれ、もっとクセのある独特のChapmanのVocalも好きになっていったのだ。彼の本質は独特のVibratoをきかせたShout。しかし、この曲のように抑え気味の歌い方をする時に、たまらなく英国的な情緒を感じさせるものがある。メンバーの出入りが激しくて雑多な音楽性を持つFamilyは懐が深い。しかし終始一貫として、その音楽性に筋が通っているのはChapmanのVocalを生かした曲作りがあるからだろう。John Wettonがベースで加入してFunkyなナンバーをやっても、その根底にはイギリス的なるものが流れている(ChapmanのVocalも含め、まったく黒っぽくならないのが素晴らしい)。英国のうらぶれた港町の場末のPubのような泥臭さが彼らの魅力なのだ。

Between Blue And Me/Family
若きJohn Wetton先生の勇姿が。それにしてもCharlie Whitneyがトレードマークのダブルネック・ギターなのはわかるにしてもJohn Wetton先生のベースとギターのダブルネック。しかもGibson。重くないのかな?この曲はツイン・ギターのハモりがあるので、そこで必要なのか。演奏スタイル、髪型、ファッション、どれをとっても英国の香りが漂ってくる。
歌詞も好きだ。

ブルーとオレの間

ちょいと海の方を見てみな。“ブルーとオレの間にあるもの”、そいつはお前サンだ。
港にゃ人っ子一人いやしない。そして船は行く。
ほら、海を見てみな。“ブルーとオレの間”。そして、それがお前サンなんだ。

 Family71年にリリースした通産5枚目のアルバム『Fearless』。ベースのJohn Weiderが脱退して、このアルバムからJohn Wettonが参加。Roger ChapmanCharlie Whitney、そしてドラムスのRob Townsendというデビュー・アルバム『Music In A Doll's House』からの黄金のトライアングルは不動。鍵盤にFlute,Vibraphoneを演奏する元Blossom ToesのマルチプレイヤーのPoli Palmer(John Michael "Poli" Palmer)も重要な存在で、本作では自作曲も提供している。Gentle Giantを思わせるChorusを駆使した曲やSteely Danを先取りしたようなインスト・ナンバーなど、これまた実にBritishな、一味違った味わいを加えている。Wetton加入でChorusも充実し、リズムにも幅が出てくる。また力技で押し通さず、リリカルな側面も増した。さらに、Brassの使い方も効果的で従来のPercussionやVibraphoneと合わせて、多様性を持つBritish Rockを聴かせてくれる。得意の芝居がかったShouterとしてだけでなくTrad風のメロディーをGentleに歌ったり、Chorusを駆使したり、Chapmanはいつになく柔軟だ。そしてFamilyは奥深い
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このグループお約束の変形ジャケット、これまた英国の味。
(Hit-C Fiore)