あからさまなお子チャマ趣味の人々をターゲットにした音楽はツラい。中でも、歌い手の自分本来の声ではなく、加工された、または明らかに、そういう趣味の方々に向けた歌い方で作為的に生み出され、マーケティングされた作品は切なくツラい。なぜなら、年月の経過は歌い手に虚像を演じ続けることの無理を生じさせるから。その作品を歌っているのは生身の人間であり、そこで演じているキャラクターと本人の温度差は、本人が一番良くわかっているという事実。彼ら(彼女たち)だって生身の人間なのである。年を取り容貌も変化し、大人の遊びもすれば恋愛もするのだ。そして、それを演じきることに成功したとしても本人はどう思うのだろうか?それでも仮面を被り続けるのがプロなのかもしれない。たとえ、自分でわりきっていたとしても、それはそれで切ない。いつの日にか虚像に無理が出ることを恐れながらも、本当の自分を表現したくてたまらなくなるのが人間ではないだろうか?ロボットやアンドロイドではないのだ。誰もそれを責めることはできない。時の流れは残酷で、だから切ない。一方、連発され気味のキッズものとか企画モノは食傷気味ではあるが、そこに聴こえる無垢な子供達の声が自然である限り、続くだろう。さて、D.E.B. Musicから出された、この作品を聴くと、そんな事を考えるのはどうでもよくなってしまう。D.E.B.といえばDubやルーツ系の作品もあるけれど、一般的に知られているのはLovers Rockの作品だろう。中でも15-16-17のこの唯一のアルバムは好きだ。なぜなら、そこには伸びやかで、その微妙な年齢でしか持ち得ない、無理のない歌声があり、バックの演奏も含めて生命感に満ち溢れているから。
『Magic Touch』は15-16-17の唯一残された77年の幻のアルバム。
15-16-17は、その名の通り、当時15歳、16歳、17歳の女の子で構成された3人組のChorus Group。レーベル・オーナーのCastro Brown自らProduce。エンジニアにはDennis Bovell。そしてバックを支えるのはSly DumbarやRobby Shakespeareといったツワモノである。
1曲目のThe Temptationsの“Just My Imagination”のCOVER“Girls Imagination”はオルガンがいい味を出しつつ屈託のない歌声が心地良いナンバー。
続く“Funny Feeling”は少し背伸びして大人びた表情をみせるVocalが微笑ましい。
気怠い雰囲気のVocalが印象的な“I'm Hurt”など、彼女達がただその幼い声だけを売り物にしたお子チャマグループではないことがわかる。
風の音の効果音と哀愁に満ちたVocalで魅了する“The Weather”もDubbyで、UKらしさが出ていてお気に入り。
The Bee Geesの“Emotion”はイントロからもうメロメロになる甘くて溶けそうなナンバー。この曲はお馴染みですな。
タイトなリズムに絡むChorusワークがCuteなアルバム・タイトル曲“Magic Touch”。
ゆったりした“Someone Special”も彼女達のナチュラルな歌声が生かされたナンバーで実に心地良いですな。
The Supremesの“Baby Love”のCOVERは、その歌詞も彼女達にピッタリで、なんともメランコリーに歌う彼女達の魅力にヤラレっぱなし。
(Hit-C Fiore)