The Master/Chico | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC



 Littl Featは本当に大好きで、メンバーの参加している作品も

結構チェックしたりしていた。

その中には、ミスマッチでは?と思われるような意外な人の作品

に参加していたりして案外面白いものがある。

例えばJohn Caleの『Paris 1919』なんて最高である。

しかし同じWest Coastとはいえ、Chico Hamiltonの作品に参加

しているとは驚きであった。

West Coast JazzShelly ManneStan LeveryMel Lewis

といった素晴らしいドラマーを生み出した。

その中にあってChico Hamiltonは一種独特のスタイルを持って

いた。

LA出身のChicoは50年代に室内楽的なスタイルを前面に出した

自身のQuintetを率いたドラマーとしてのイメージが強い。

その音楽は、眩しい太陽、爽やかな潮風を受けながら真っ青な

海を進んでいくヨットといった初夏を思わせる従来のWest Coast

のイメージとは違った、ある種内省的な独自のものを感じさせる。

そしてそれは、巧みなブラッシュ・ワークマレットを使ったりした

Chicoのクールで思慮深いドラム奏法によるものが大きい。

タムの裏皮を外した乾いたドラム・サウンドとスペースを生かした

ドラム・ワークはストイックですらある。

そんなChicoが、なぜにLittle Featのメンバーと?

そしてもっと意外なのはFunkyなオルガン奏者Stu Gardnerと?


  『The Master』は73年に発表されたChico HamiltonがChicoと

いう名義で、Staxに残した作品。

そう、73年といえば、あのLittle Featの名作『Dixie Chicken』が

リリースされた年である。

オリジナル・ジャケットにはLittle Featの表記は見あたらない。

しかしドラムのRichard Haywardを除くFeatの5人のメンバーが

参加している。

但し、Lowell GeorgeはGeorge Lowellという変名で参加。

そして、Big MouthというのFunkグループを率いたVo&鍵盤奏者

のStu GardnerがOrganで参加している。

全曲インストで多分、メンバーがジャム・セッション風に演奏して

いったものを録音したといった感じ。

Chicoの存在感が薄くて、全体の異種混合ぶりも中途半端なのは

残念だが、そのラフな感じが結構、気持ち良く聞き流せる。

One Day Five Months Ago”ではGeorgeのスライドが炸裂。

Fell Good”は一発モノのラテンっぽい感じ。

Percも含めてSantanaのようなノリが面白い。

Fancy”はイナタいリフの曲で途中で4Beatになったりするが、

中歩半端な感じは否めない。

Gengis”はベースとエレピによるイントロにスライドが絡んでくる

ところが気持ちよい。

官能的なLowellのギターが良い。

Conquistadores'74”は、またまたSantanaっぽいラテンな曲。

Stacy”はChicoのシンバル・ワークとエレピが心地よいワルツ


             Hit-C Fiore