The Spidersといっても、こちらは50年代に活躍したNew Orleansの
R&Bヴォーカル・グループ。
元々は、New Orleansで40年代から別の名前でGospelカルテットとして
活躍してきた彼らは、泥臭いヴォーカルが魅力である。
Gospel出身のR&Bグループとはいっても、むしろ強烈なGospelっぽさ
よりも南部独特のアーシーな感覚で、意外に色んなタイプの曲を器用
に歌いあげていくところが面白い。
そして、そこかしこにBluesフィーリングが渋くまぶされているのが良い。
この手のグループには、よくある兄弟を含むメンバーのハーモニーの
混ざり具合がローカルな色合いで、これが実に南部の片田舎を思わせ
てくれる。
元々、彼らに興味を持ったのはDave Bartholomewがらみであったが、
バックの演奏もさることながら、当時の都会派R&Bグループとは一味
違った彼らのヴォーカルの味わいが結構気に入ってしまった。
実はNew Orleans出身のR&Bヴォーカル・グループというのは少ない
らしい(70~80年代のFunkではChocolate Milkなんていうグループが
いるが)。
『The Imperial Session』は53年から60年にかけてThe Spidersが
同レーベルに残した作品を集めたものである。
CD2枚組みで、彼らの未発表作品や、Gospel時代の曲、さらにメンバー
のソロ作品も含んでいる。
なんといってもJazz、R&Bといった垣根を越えたDave Bartholomewが
手がけるバックのサウンドがノリが良くて気持ち良い。
抜群のSwing感とBluesyな感覚を持ったNew Orleans独特のサウンド
の妙が楽しめる。
しかも、彼らのコーラス・ワークの邪魔にならずに、寧ろ寄り添うように
盛り上げていく演奏が実に味わい深い。
勿論、The Spidersの田舎っぽいBluesフィーリングは実に魅力的。
“I Don't Want To Do It”のバックと歌が一体となったSwingyなノリ
の素晴らしさ。
“You're The One”は泥臭いバラードでBluesyに心に訴えかけてする様
は格別。
“Mellow Mama”は未発表曲というのが勿体ない位の曲。
“That's Enough”も彼らにピッタリの曲。
ジャンプもスローもミディアムも実に飄々とこなしていく様が彼ららしい。
また、Bartholomewの手による、単なるコーラス・グループのバックに
留まらないNew Orleansサウンドも素晴らしい。
冬が終わり春に向かっていく中でに日向ぼっこしながら聴きたい感じ。
Allan Toussaintは60~70年代のNew Orleansを象徴する存在だが
Dave Bartholomewの50~60年代も正にNew Orleansそのものである。
Hit-C Fiore