Lugar Comum/Joao Donato | BLACK CHERRY

BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

 真冬の肌寒い朝、いつまでも暖かい毛布にくるまりながら心地よいまどろみ

の中で聴いていたい極上の音楽

Joao Donatoの作り出す適度にスリリングで心地よいGroove脱力した歌声

に包まれていると、あっという間に時が過ぎ去ってしまう。

Amazoの奥で生れてRioで育った典型的な天才型の男はBossa Nova全盛

時のブラジルに背を向けてしまった。

Bossa Nova創生期に、そのぶっ飛んだ音楽性と、もう一人のJoao並の奇行

ぶりで周囲に全く受け入れられずにアメリカに渡ってしまったDonato

そこでMongo Santamariaのバンドを始めとするラテン・ミュージシャンと活動し、

Stan Kentoをこよなく愛するDonatoは、Jazzの世界でも活動した。

それが、彼のユニークなリズムとハーモニー感覚に磨きをかけた。

Lugar Comum』はアメリカから帰国後にBahiaGilberto Gilの全面協力

のもとに作られたブラジル復帰2作目

75年作のこの作品はDonatoの一連のソロ作品の中でも一般的には地味な

存在なのかもしれないが、大好きなアルバムだ。

前作の『Quem E Quem』はブラジル帰国直後に制作された。

Marcos Valleに無理やりマイクに向かわされたというDonatoが初めてVocal

をとった捨て曲なしの素晴らしい内容を持ったアルバムだ。

この邦題『紳士録』という73作の作品が出た頃、CaetanoGal Costa

いったBahiaの年下の世代との交流を通じてDonato特異性を放つ音楽性

は、さらに柔らかく味わい深いうねりを持ったものに深化していったように思わ

れる。

Voclをとる事によって、元々カラフルで立体感を持つサウンドに、さらに奥深さ

と、やるせなく、ユーモラスな人間くさい味わい深さが加わった。

そしてGilと組み、お互いの独特のリズム感覚がミックスされて、郷愁に満ちた

傑作『Lugar Comum』が発表される。

浮遊感のあるサウンドにエレピやほんわりしたDonatoVocal口笛Flute

が絡んで作り出す音世界は映像的だ。

DonatoGilというお互いに抜群のリズム感覚を持った二人が描き出す世界は

ジャケットの波のごとく永遠に繰り返されるかのような心地よいGrooveを持って

いる。

平凡な場所」とでもいう意味を持つアルバムタイトル曲の歌詞にある

すべてのものが、それがやってきた元の場所へ帰っていく’という一節が良い。

Banneira”はJoyceのカヴァーで有名な名曲。


               Hit-C Fiore