Baby Scratch My Back/Slim Harpo | BLACK CHERRY

BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

冬の陽だまりの中で野良猫が気持よさそうに昼寝をしている。

あくびをしたりして何とも長閑な風景ではある。

毎日ショッキングなニュースが飛び交う中でユルい生活のススメではない

けれど、そんなに焦らずに野良猫のように気楽にのんびり日々を過ごして

いく生活ができたらいいのに。

休日の昼下がりに冬の柔らかな陽射しを浴びながら聴くユルユルのBlues

まったりしたウォーキン・ビートと力のヌケた声が心地よく眠気を誘う。

生れも育ちもLouisiana脱力Blues職人Slim Harpoのまったり感が好きだ。

ホッコリした実にハートウォーミングなBluesは一度ハマると抜け出せない。

文字通りSwampなサウンドの底なし沼にズブズブと沈み込んでいく。

この、首からハーモニカ・ホルダーぶら下げ、ギターをかき鳴らして気だるそう

に歌うオッサンをみくびってはいけない。

60年代中期ブリティッシュ・ビートHipな連中が夢中になった、中毒性

高い不思議な魅力を持ったBluesだ。

いい感じに力の抜けた柔和なスタイルの中に、モダンさとflexibleな音楽性が

顔を覗かせる。

KinksだってStonesだって当時、英国のカッコイイ連中はこぞってSim Harpo

をカヴァーした。

ThemだってYardbirdsだってPretty Thingsだってカヴァーしている。

The Whoに至ってはHigh Numbers時代に“I Got Love If You Want”の

歌詞をMods向けに変えて歌っている。

そんなHipな連中を魅了して影響を与えたSlim Harpoは偉大だ。

ギターやハープを演奏しながら渋い低音で歌う人のよさそうなオッサンの脱力

Bluesを聴いていると世の中のセコセコ、ギスギスした嫌な風潮など、どこかへ

吹き飛ばされてしまって、いつのまにか心地よい、のんびりした暖かい世界に

浸れるのが良い。

 『Baby Scratch My Back』はSlim Harpoセカンド・アルバム

アルバム一発目から、Stonesのカヴァーで知られているワンコードのBoogie

Shake Your Hips”でいきなりカッコイイR&B調の演奏に、ユルいVocal

のせた脱力感がCool

Midnight Blues”の力の抜けたC&W調のノリも面白い。

Otis Reddingがカヴァーしたアルバム・タイトル曲もギターのトレモロのきいた

リフが最高にCoolな演奏。

それにのせる粋な脱力VocalHarpo節で気持ちよい。

I Need Money”のBoogieもまた腰を揺らせるかっこよさ。

60年代後半に入るとSlim HarpoはよりFunkyになって、これまた格別の味わい

がある。

心地よさとHipな中に陽気さや暖かさ、おおらかさが滲み出るSlim Harpoの世界

は当分抜け出る事ができない。


Hit-C Fiore